前回、猫たちとの引っ越しと、解体見積もりの話を書きました。あれから我が家は、あの処分代を少しでも減らそうと、来る日も来る日も荷物と格闘しています。
今回は少し時間を巻き戻して、この春に決めた「太陽光パネルと蓄電池」の話から書いてみます。
長期優良住宅の範囲で十分、のはずだった
我が家が目指しているのは、長期優良住宅です。断熱も耐震も、長く住み継げる性能もしっかり確保できて税制優遇ということで、私が家族に提案しました。
家づくりを始めた頃は、太陽光パネルまでは載せないつもりでいました。丁度、ハウスメーカーで家を建替えられたばかりの知人も「費用もかさむし、敢えて載せなかった」という話を聞いていたので、我が家も太陽光パネルまでは要らないよね——と、両親とも話していたのです。
長期優良住宅においては、太陽光パネルは、義務でも認定の条件でもありません。我が家にとっては、純粋に「載せるか、載せないか」を自分たちで選ぶ設備でした。
気持ちが動いたのは、「もしも」への備えだった
要らないと思っていた気持ちが揺れたのは、家の事情ではなく、世の中の方でした。
もともと我が家は、備蓄品を備えておきたいタイプ。防災用品も、家の中にしまうだけでは足りず、わざわざ屋外に備蓄倉庫を置くほどでした。
そこへ、エネルギーを取り巻く世の中の不安定さや、じりじりと上がり続ける電気代が重なりました。
「停電」という言葉が現実味を帯びてきたとき、はたと気づいたのです。水や食料は備えているのに、電気はどうするのだろう、と。
太陽光パネルで昼間に電気をつくり、蓄電池にためておけば、停電の夜でも、家の中の最低限のことはまかなえます。
冷蔵庫が止まらない、明かりがつく、スマホの充電ができる。それはもう、私にとっては非常食や水と同じ「備蓄」でした。
屋外の倉庫に積んだ缶詰の隣に、電気という備えがもう一列増える。そう思えた瞬間に、載せない理由がなくなったのです。
「家づくりの処方箋」でご紹介している「太陽光×蓄電池で停電に強い家」というコラムも、後押しに繋がりました。
背中を押してくれたものが、もうひとつあります。
東京都の補助金です。太陽光パネルと蓄電池の設置には決して安くない費用がかかりますが、都の補助はその負担を大きく和らげてくれる規模でした。
備えたい気持ちと、それを後押ししてくれる制度。ふたつが揃って、我が家は太陽光パネルと蓄電池を載せることに決めたのです。
補助金の申請期間を忘れずに
太陽光パネルと蓄電池を載せると決めて、そこで初めて知ったのが、補助金には順番がある、ということでした。
契約や工事よりも先に「申し込み」を済ませておかないといけないものが少なくないのです。
正直に白状すると、この手続きについては、ほとんど工務店に任せきりでした。
「間に合いますか?」と一度確認しただけで、あとはお願いします、と。
というのも補助金は、対象になる機器が決まっていたり、書類が一枚でも欠けると受けられなかったり、国と都と区市町村で条件が入り組んでいたり、しかも年度によって中身が変わったりと、なかなか一筋縄ではいかないもの。
申請関係に慣れている工務店だと知っていたので、お任せしていたのです。しかし、スムーズに進めてもらえて、あらためて頭が下がりました。
家づくりでは、こうして施主が全部を把握しきれない場面が必ず出てきます。
だからこそ、細やかに動いてくれる、苦手な部分をカバーしてくれる相手と組めるかどうかが、効いてくるのだと思います。
慣れないことばかりの仮住まいで
さて、6月中旬に引越してきた仮住まいですが、こちらは築50年の木造の物件。
水回りはリフォーム済みできれいなのですが、窓を開ければ草はぼうぼう、見たこともないサイズの虫が飛んできます。実家からほんの数メートルしか離れていないのに、窓の外ののどかな風景に、遠いところまで来た気分になるのだから不思議です。
そして、いまの生活の不便の多くは、家の性能そのものから来ています。窓は断熱窓ではなく、冬の底冷えも夏の暑さもそのまま入ってくるのです。

先日、この仮住まいに友人が泊まりに来たのですが、開口一番「……この窓、すごくレトロだね」とかなりオブラートに包んだ言い方で表現していました。凹凸のあるガラスの窓に、木製の懐かしいタイプの雨戸が付いていますが、雨の日は湿気で膨らむのか雨戸がきちんと閉まらないのです。
何よりも辛いのは、押入からクローゼットにリフォームされた収納スペース内から、うっすらカビ臭が漂ってくることでした。引越し前、大型家具を預ける倉庫選びの際にあれほど気を揉んだ黒カビが、なんとこの仮住まいには、すでに我が家の一員のような顔で住みついていたのです。
黒カビに加え、古い書類をたくさん処分したせいで埃が舞い、父の具合も悪くなってしまいました。
慌てて、拭けるところをアルコールで拭き消毒し、寝具を一新し、空気清浄機を最大で稼働させたところ、無事に体調は戻りましたが、年を重ねると、ほんの些細なことで足をすくわれるものなのだな、としみじみ感じます。
古い物件に住んでみて感じるのは、断熱・気密などの性能が、住む人の暮らしをどれだけ当たり前に支えているか、でした。
数値で説明してきたものが少し変わるだけで、こんなにも生活に響いてくるものとは思いもしなかったのです。
賃借人として住んでいる今、築古の物件をお持ちのオーナー様にこそ「物件の性能」を意識してほしいと思います。
もどかしいのは、我が家は今この家の借り手なので、勝手に手を入れられないことです。窓ひとつ替えたいと思っても、それは大家さんの領分。それでも職業柄、つい「断熱リフォーム」について考えてしまいます。手を入れれば見違える伸びしろがあるな等々。大家さんと話す機会があれば、提案してみようと思います。
仮住まいの毎日は、正直ストレスの連続で、慣れない環境に家族の小さな喧嘩も絶えません。
それでも、こまめに息抜きをしながら、なんとかやり過ごしていきたいと思います。
【過去のコラムはこちらから】
【1】実家の建替えを決めた日
【2】家族の本音と、現実との折り合い
【3】ザ・ハウスの工務店マッチングサービスに申し込んだ日
【4】工務店マッチングサービス、二回目の電話で見えてきたもの
【5】工務店との面談開始(前編)
【6】工務店との面談開始(後編)
【7】工務店の候補を検討する
【8】工務店を最終決定する
【9】契約書にサインする日
【10】コーディネーターとして、施主として
【11】好みを伝え続けた先に、形があった
【12】体感して、確かめて、決めていく
【13】水回り見積もりと仮住まい準備、同時進行の日々
【14】請負契約を前にして、今やっておくこと
【15】仮住まいへの旅立ち前夜
【16】猫の引越し
自分たちに合う依頼先を見つけることも、家づくりの楽しさのひとつです。
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