赤い字だらけの仕様書
「これが、決めることの全貌です」
設計契約を終えた後、工務店の担当者からA3サイズの書類を4枚、手渡されました。ぱっと見て、まず思ったのは「赤い字がやたらと多い」ということ。よく見るとその赤字のひとつひとつが、これから決めていかなければならない「仕様」の項目でした。床の色、窓枠の色、建具の色、窓の形、コンセントの位置……と膨大な量ですが、担当者の方は笑顔でこう言いました。
「この赤字を、黒に変えていきますよ」
あまりの量の多さに圧倒されてしまいましたが、少し視点を変えてみると、この赤い字の多さは「こんなにも自分たちで選んで決めることができるんだ」ということでもあります。工務店と相談をしながら、自分たちの好みを選び仕様を決めていく。注文住宅ならではの、醍醐味だと思います。
ショールームで、実物と向き合う
工務店への訪問から数週間後、あるメーカーのショールームに見学へ行きました。キッチンやバスルーム、トイレ、洗面所の仕様を1日で決めるため、ぎゅう詰めのスケジュールでしたが、それだけの価値がありました。
カタログの小さな写真と実物大とでは、印象が大きく変わるからです。
完成した部屋を見て「思っていたものと違う」となってしまうケースは、家づくりではよく聞く話。だからこそ、ショールームには行けるときに足を運ぶことを強くお勧めします。
ただし、思わぬ落とし穴もあります。さまざまなモデルが並んでいるので、想定していた色とは別のものに惹かれてしまうのです。私自身も、白っぽいキッチンを検討していたのに、木目調のデザインに気持ちが揺れました。床をコルクにするので合うと思い母にも提案してみましたが一蹴されてしまいました。
そんな母ですが、私よりも目移りが多く、終盤は話の流れを戻すのが大変でした(笑)。それだけ実物を見ることには説得力があるのです。
各コーナーでの収穫も大きいものでした。キッチンは大きなパネルで戸棚の色を確認でき、全体の雰囲気がぐっと具体的になります。バスルームは実際に水が出るので、完成形をリアルに想像できました。トイレは最近のデザインがずいぶんシンプルになっていて驚きました。我が家は平成初期に建てているので全てピンク色なのですが、時代の移り変わりをしみじみと感じました。洗面所では、母がメインで使う1階と私がメインで使う2階で、選んだ戸棚の形が違いました。長年一緒に暮らす家族でも好みは違うものだと、扉を開けたり引き出しを引いたりしながら改めて実感しました。
工務店の担当者と一緒に行くことも、大きなポイントです。その場で疑問を解消できますし、言葉にしにくい要望も伝わりやすくなります。忙しい方にはオンライン見学も一つの選択肢だと思いますが、時間が許す限り、ぜひ足を運んでみてください。
希望が、形になる瞬間
ショールームを一通り見学した後は、以前決めた家の外観のプランを見せていただきました。
用意されていたのは二種類。
カフェラテのような色、そして濃い茶色のツートンが良いという母の要望を忠実に再現したものと、設計士さんが母の好みをさらに強く反映させてアレンジしたものです。

見た瞬間、アレンジ版のプランに思わず「すてき!」と声が出てしまいました。母もうっとりとして、目を輝かせていました。
打ち合わせのたびに「あれが好き、これが好き」「この雑誌のこれが好き」と、実際の本を見せながら担当者と話し続けてきた積み重ねが、ちゃんと形になって目の前に現れた瞬間でした。
ただし、アレンジ版は外壁にレンガ風のタイルが貼られており、これは金額が吊り上がるな……とひと目でわかるものだったので、「あくまで色合いだけ、こちらを目指してください」とお願いしました。
もちろん要望を丁寧に聞き取って、こちら以上に形にしてくれた設計士さんの仕事に、素直に感謝したいと思います。
できることをやって、待つ
さて、2026年4月現在、世界情勢の影響が住宅業界にも及び、建材や設備の供給に不安を感じている施主の方も少なくないと思います。私自身もその一人です。
先行きが見えにくい日もありますが、それでもメーカーや工務店の方々が精一杯動いてくれている。だからいまは、できることをやって、前を向いていようと思っています。
希望が一つ形になって目の前に現れたとき、その嬉しさが次の一歩を踏み出す力になる。
そう信じながら、今日も仕様書の赤い字を一つずつ黒に変えていきます。
【1】実家の建替えを決めた日
【2】家族の本音と、現実との折り合い
【3】ザ・ハウスの工務店マッチングサービスに申し込んだ日
【4】工務店マッチングサービス、二回目の電話で見えてきたもの
【5】工務店との面談開始(前編)
【6】工務店との面談開始(後編)
【7】工務店の候補を検討する
【8】工務店を最終決定する
【9】契約書にサインする日
【10】コーディネーターとして、施主として



