森林は、生物多様性の保全や、土砂災害の防止、水源のかん養機能、地球温暖化の防止、レクリエーション機能や休養の場の提供など多くの機能をもっており、私たちの生活と深くかかわっています。たいせつな役割を持つ森林を維持するためには「植える → 育てる → 使う → 植える」というサイクルがバランスのとれた状態であることが重要で、街に住む私たちもサイクルを維持するための役割を担っています。
林野庁「平成27年度森林・林業白書」より
しかしながら「植える → 育てる」をになう林業は後継者不足に陥り、手入れがされずに放置されている森林が増えています。
住宅の柱や梁に使われる木材は真っすぐに伸びた強度のある木ですが、山で自然と大きく育つのではありません。苗木を植えてから下草刈り、つる切り、枝打ちなどたくさんの作業が行われ、50~60年と長い間、手間をかけた成果として美しい、強い柱や梁へと生まれ変ります。木材も、お米や野菜、果物と同じく大切に手をかけて育てています。
今、植林しても50~60年後に木造住宅を好んで建てる方がどのくらいるか、木材の需要がどのように推移するのかなど先行きがとても不透明で、林業家の植林意識が減退しています。さらに林業家の6割が小規模の山林所有者で、他からの収入も得ている兼業林業家であることや、山林を維持するために補助金と言う税金が使われており、林業家として積極的な改善を行う必要性を感じていないとも言われています。近年、林業は魅力のある仕事ではなくなりました。
これらを打開するために「森林環境税」を新設し、住民税に上乗せして1人年間500~1000円程度を徴収することが検討されています。補助金だけに頼るのではなく林業が魅力のある仕事になり、街に住む私たちにとっても家を建てる際に魅力ある価格で材木が提供される好循環の構築が求められています。