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「そろそろ家づくりを本格的に考えようと思っていて…来年の3月末には引っ越したいんですけど、間に合いますか?」
この時期(5〜6月)になると、こうしたご相談が非常に多くなります。
ですが率直にお伝えすると、今からのスタートで、来年3月末までの引き渡しを目指すのは、スケジュール的にかなり厳しい状況です。
注文住宅でこだわりたい方の場合、必要な検討や調整に十分な時間を確保できない可能性があり、依頼先の選択肢は限られてくるのが実情です。
注文住宅は、分譲住宅、建売住宅よりスケジュールが長くなる傾向あり、どうしても完成までの期間が長くなりがちです。「ただ建てる」のではなく、「どんな家にしたいかを一緒に考える」プロセスがあるからこそ、時間が必要になるのです。
なぜ注文住宅は時間がかかるのか?
● 土地探しから始めるケースが多いから
土地探し、購入手続き、住宅ローンの申請など、建築前のステップに時間が必要です。
● 一から決めることが多いから
間取り、設備、仕様、デザインなど、一から考えるため、打ち合わせの回数も自然と増えます。
● 施主の「納得したい」「悩みたい」という時間も大切だから
こだわりたい人ほど時間がかかります。これはネガティブな「遅れ」ではなく、満足度の高い家づくりには必要な“プロセス”です。
依頼先によって異なる、家づくりのスケジュール
● ハウスメーカー:企画型住宅が多く、仕様が決まっているためスピーディ。
● 建築家(設計事務所):設計に時間をかけるため、完成まで1年半以上になることも。
● 工務店:自由度とスピードのバランスが取れた存在。打ち合わせ次第で柔軟に対応できるのが魅力。
工務店の目安は「土地決定後、約1年前後」
土地が決まってから、引き渡しまで8か月~約1年が目安になります。
ただし工務店によって異なり、企画型なら8か月、自由設計でこだわるほど1年半以上かかるケースもあります。
工務店のスケジュール説明は「契約から引き渡しまで」
工務店が提示するスケジュールは、「契約から引き渡しまで」が一般的です。
土地探しや依頼先の検討にかかる期間は含まれていないため、家づくり全体のスケジュールは、施主の行動によって大きく変わります。
契約後も、こだわりの深さで差が出る
契約後は、工務店が全体のスケジュールを管理して進めてくれますが、実際の進行スピードは施主ごとに大きく異なります。
多くの方が「満足のいく家にしたい」と願って家づくりに臨みますが、その中でも「どこまでこだわりたいか」「どこまで細かく検討したいか」のスタンスは人それぞれです。
ある工務店の話では、あるご家族は打ち合わせも比較的スムーズで、8か月ほどで完成したのに対し、別のご家族は約2年かけてじっくりと形にしていったとのことでした。どちらも丁寧に家づくりを進めたことに変わりはなく、違ったのは「検討の深さ」と「決定のスピード」だったそうです。
このように、こだわりの度合いや意思決定の進め方によって、同じ工務店であってもスケジュールには大きな幅があることを、あらかじめ知っておくと安心です。
「急ぎたいからこだわらない」でも、「こだわりたいから時間をかける」でもなく、自分たちが何を大切にしたいのかを軸に、バランスをとることが満足度の高い家づくりにつながります。
近年は、さらにスケジュールが長くなっている
ここ数年は、次のような外部要因により、スケジュールが延びる傾向が強まっています。
● 2025年4月の法改正:省エネ基準の適合義務化と耐震性の強化により、確認申請に+1か月
● 住宅性能やデザインへの関心の高まり:希望内容が高度化し、打ち合わせも丁寧に
● SNSによる情報の多様化:「もっと良い選択肢があるかも」と決定に時間がかかる
つまり、以前よりも家づくりには“時間がかかる時代”になっているのです。
3月末までに入居を目指すなら、選択肢と進め方の見直しを
今からのスタートで3月末入居を目指す場合、プランや仕様、依頼先の選定において、柔軟性やスピード感が求められます。一部の工務店では対応が可能な場合もありますが、自由設計でじっくり検討したい方には不向きなスケジュールと言えるかもしれません。
「どうしても3月末までに」と考える場合は、今すぐに動き出し、どこまで自分たちが妥協できるのかを整理しておくことがカギになります。
スケジュールの主導権は、自分たちにある
家づくりに“正解のスピード”はありません。
大切なのは、「どこに時間をかけるか」「いつまでに完成させたいか」を見極め、納得のいく選択を重ねていくことです。
たとえば、お子様の小学校入学にあわせて引っ越しをしたい、というようにご家族のライフイベントに合わせた明確な期限がある方もいらっしゃるでしょう。そうした場合には、どの部分にこだわり、どこは柔軟に考えるかを整理しておくことで、スケジュールと満足度のバランスを取りやすくなります。
すべてにこだわることが難しい場面もあるかもしれませんが、自分たちにとって何が大切かを見極めることが、後悔の少ない家づくりにつながります。
焦って進めるよりも、家族の事情や理想の暮らしに合った“納得できる進め方”を選ぶことが、結果として満足度の高い家づくりの近道になるはずです。