揺らぐ曲線
例えば、観葉植物の葉。葉を形作っている「曲線」をとても美しく感じます。
観葉植物の葉を形作っている曲線は、きっと数か月後には今見ているのとは違う線を描いています。そして、今、葉を形づくっている曲線は、偶然の巡り合わせによってここにあります。これはイミテーションの葉とは決定的に違うところです。
先日、そんな「美しい曲線」を持つ住宅に出会ってしまいました。
ほんのわずかな壁の曲がり具合。
特別な高級素材を使って仕上げているわけでもないのに、部屋の空気が少しだけ上質かつ密度が濃くなるような空間でした。
曲線の美しさもさることながら、それがもたらす効果はなんといっても陽のまわり方でした。
直線で構成された家は影の彩度が強く、コントラストが効いた印象をもたらしますが、曲線は影も光も柔らかく室内をまわります。時間ごとに角度を変えて入る光は、時には直接的に、時には間接的にゆるく揺れているようで、柔らかな空気感が漂う美しい空間でした。
ほんのわずかにS字になっているラインは図面に描き起こすことも至難の業。2次元の図面を現実のものにする試行錯誤がなければ成立しません。
最近は工場で機械的に採寸加工された木材を現場で組み立てていくことが主流ですが、曲線をプレカット工場で作るには限界があるので、今回は現場で木材を手刻みする昔ながらの作り方です。
「久しぶりに一分の一の原寸で施工図描いたよ。難しかったけど楽しかったねー。」と現場監督。原寸図を起こして丁寧に形にしていく職人さんの心意気もあっぱれです。
だからこそ感じた美しさ。
曲がり具合が強すぎても弱すぎてもいけないイイ塩梅の曲線。美しく揺らぐ曲線でした。