IoTと住宅業界への期待
「緩いつながり」がインターネットでつながり、これらの「緩いつながり」から日常的にサポートを受けることができるようになれば、少子高齢化社会の歪みの解消にIoTが一役買ってくれるのではないかと期待が持てます。
ただ、私たちが実際に製品を購入したりサービスを利用しようと思うと、情報を集めるだけでも大変なことになりそうです。一人ひとりが抱えている問題は様々ですので、似たような境遇にある人でも、どの程度のことをどのようにしたいかは違うはずですし、その違いが「私事」との開きを感じてしまうものであれば、「使ってみたい」という気持ちにはならないのではないかと思います。
ましてや、自分の問題を解決してくれる手段にはどのような製品やサービスがあるのか、最適な組み合わせはどれか、またそのコストはいくらなのかをキャッチアップしていくのはそれだけでも大変なことです。
そこで期待されるのは、施主の家づくりに直接関わるハウスメーカーや工務店、建築家がIoTの推進者になることです。
ハウスメーカーや工務店、建築家は、家づくりの中で、施主が実生活で抱えている課題を聞くことができます。どんな生活スタイルを望んでいるのか、そしてどんな家族構成なのか、予算はどの程度掛けられるのかといったことを「家づくり」という「快適な暮らしを実現するためのプロセス」を通じて知ることができます。
実生活で起きている数々の問題に向き合う立場にある人が、間取りやデザイン、素材を考えるのと同じレベルでIoTを捉えることができれば、部分最適に陥らない、実生活に役立つ提案ができるのではないでしょうか。
ただし、それぞれの人に最適な選択ができるようになるためには、製品の互換性やメーカーや製品を超えたオープンなネットワークが必要です。かつて「情報家電」と呼ばれる家電が注目された際には、各メーカーが囲い込みを目論んでしまった結果、同一メーカーの製品の連携に留まり、オープンなネットワークに発展することはありませんでした。
IoTが私たちの抱える現実的な問題の解消に貢献し、日常にフィットした存在として発展を遂げるためにも、IoT製品のメーカーやサービス提供者には、ぜひ生活者の視点に寄り添ったオープンなネットワークを実現して欲しいと思います。