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1万冊の蔵書を安心して収めたい
今回ご紹介するのは、蔵書1万冊を所有するK様ご夫婦(東京都・30代後半)の事例です。
「本の重さに耐えられる床」「湿気から守る換気」「紙を傷めない採光コントロール」という3つのテーマを軸に、家づくりの初期段階から“書庫のあり方”が大きな検討ポイントになりました。
しかし、検討していた土地は住宅密集地で、日当たりが強い南面と、湿気がこもりやすい北側が極端な環境。単純に“広い部屋に本棚を並べる”だけでは、本の保存環境として不十分でした。
後悔しないために知っておきたい3つのこと
1.書庫の重量と床耐荷重の関係
2.湿度・換気計画の重要性
3.採光をコントロールする間取りの工夫
重量・湿気・採光が生む書庫計画のジレンマ
K様ご夫婦は、専門書・文庫・大型本が混在する蔵書1万冊を所有。
一般的に本棚1台(幅90cm)で約200~300冊、重さにすると200kg前後になることも珍しくありません。
つまり、書庫全体では1トンを超える荷重がかかる可能性があります。
検討していた土地は南北に細長い形状。
南側は日当たりが強く、紙の劣化が心配。
北側は湿気がこもりやすく、カビのリスクが高い。
「広い書庫をつくりたい」という思いから、当初は2階に大きな書庫を設ける案もありましたが、
・床補強のコスト
・階段での本の移動の負担
・湿気がこもりやすい構造
などを考えると、現実的ではありませんでした。
さらに、書庫を北側に寄せると湿気対策が必須になり、南側に寄せると採光を遮る工夫が必要。
「ただ本を置くだけではなく、保存環境として成立するか」が大きな課題になりました。
1階書庫集中か?、スキップ書庫か?検討した選択肢は2つ
A:1階に書庫を集中させる
メリット:
・床耐荷重の不安が少ない
・湿度管理設備をまとめやすい
・本の出し入れが楽
デメリット:
・1階の居住スペースが圧迫される
・採光調整が必要
B:スキップフロアに書庫を設ける
メリット:
・空間を立体的に活用できる
・採光をコントロールしやすい
デメリット:
・床補強が必要
・換気計画が複雑になる
K様は当初スキップ書庫に憧れがありましたが、 「本の量と重量を考えると、1階集中が現実的」と判断されました。
マッチングコーディネータの視点!
これまでの相談で多いのは、「本棚の量だけ決めて、保存環境を考えていなかった」という後悔です。
書庫は“収納”ではなく“保存環境”です。工務店へ要望を伝えるときは、次の3点を整理すると提案の精度が大きく上がります。
・蔵書の種類と冊数をざっくりでいいので伝えること
(大型本が多いか、文庫が多いかで棚の奥行きも変わる)
・湿度管理の優先度を明確にすること
(除湿機前提か、換気システムで対応したいか)
・採光をどこまでコントロールしたいかを伝えること
(自然光を入れたいのか、完全遮光したいのか)
これらを整理して伝えることで、
「どの工務店が書庫づくりに強いか」
「どの工務店が湿度管理に詳しいか」
といったマッチングの精度が高まり、結果として満足度の高い家づくりにつながります。
K様が選んだのは「1階集中+採光制御」
最終的にK様は、1階北側に書庫を配置し、
・床補強を施した上で壁一面の本棚を設置
・北側の湿気対策として24時間換気+除湿機スペースを確保
・南側からの光が直接入らないよう、廊下を介した採光計画を採用
これにより、本の保存環境を守りつつ、日常の出し入れもしやすい“静かな書庫”が実現しました。
“収納量”だけでなく“本と暮らす環境”を描くことが大事
書庫計画は、単に本棚の数を増やすだけでは成立しません。
「どんな本を、どんな環境で、どんな頻度で扱うのか」
これを整理することで、土地の形状や生活パターン、将来の蔵書増加まで含めた最適な書庫が見えてきます。
本と暮らす家は、日々の満足度を大きく左右する空間です。
保存環境と使い勝手の両方を考えた計画こそ、蔵書家にとっての理想の住まいにつながります。



