土地を購入して注文住宅を建てる場合、そして住宅ローンを組むとなると、不動産会社、建築会社、金融機関と、少なくとも、この3つの会社とは、さまざまな形でお付き合いすることになります。以前のコラムで住宅営業マンの常識とお客様の常識との違いに関してお話しをしましたが、相手が3つとなると更に大変です。
実際のお話
●住宅ローンが問題
そのお客様は、「買いたい土地があるが、どんな家が建てれるか?」とご相談に来られました。土地は超狭小地でしたが、ご家族も少なく、必要な広さは何とか確保できそうでした。
ただし、住宅ローンが問題でした。土地の条件が厳しいため、融資してくれそうな金融機関がなかなか見つかりません。
何とか地元の信用金庫から前向きな回答を得られたので、お客さまに相談に行ってもらうこととなりました。かなりの数の金融機関に打診した結果でしたので、ここ以外では無理かも知れないと、しっかりお伝えさせていただきました。
借入れ可能額や、金利など色々と説明を受け、住宅ローンが組めそうとなり、本格的にその土地の購入に向けて動き出しました。
●土地購入に向けて
私も不動産会社に同行しました。地元の会社で土地の売主でもあります。購入の希望を伝え、申込書にサインをし、色々と説明を受けて帰りました。
その後、プランの変更や見積もりの調整など打合せを重ね、ほぼ計画案をまとめることができましたが、少し予算オーバーです。予算の上限は決まっており、また建物も、これ以上のコストダウンは難しく、最後、土地の価格を少し負けてもらえないかと不動産会社に交渉に行くことになりました。
不動産会社は、当初難色を示していましたが、お客様より、どうしてもこの地域に住みたい。家についてもあきらめるところはあきらめ、ギリギリまでコストダウンをした話などを伝えた結果、どうにか希望金額まで土地の価格を下げてもらうことができました。
担当者も「地元だから頑張ってみるか!」という感じでした。
後は、和気あいあいと世間話など交えながら事務的な話を行い、お日柄をみて売買契約の日取を決めました。
信用金庫にも連絡を入れ、売買契約締結後、すぐに審査書類を持ち込むので、どうぞよろしくと、段取りを付けておきました。全て準備万端。売買契約当日を迎えました。
●売買契約当日
応接室で、出されたお茶をすすりながら待っていたところ、担当者が書類を抱えて部屋に入ってきました。
その時です。隣に座っていたお客様から「クスクス」と笑い声が、何ら面白ことなど無いのですが・・・
そして「なんだ、もう契約書つくっているんだ!」とのお言葉。なんのことだか良く分かりません。当然でしょう。ですから前回金額交渉し、今日の日時を決めたのではないですか!
と思っている矢先に、「今日、もう少し値引きしてもらおうかと思っていたのに!」と、笑顔のままおっしゃいました。
不動産会社の担当者も最初は苦笑いでしたが、だんだんと怒りの面持ちになってきました。
私もお客様にいろいろと説明をしたのですが、そのやり取りを、こわい顔で見ていた担当者もついに、バン!とテーブルをたたいて立ち上がり「この話は無し!売る必要なし!」と大きな声で言いながら、応接室から出て行ってしまったのです・・・
お客様は、不動産会社の担当者に対し、「なんであんなに怒っているのか分からない」と、そして私は、お客様に対し、「なんであんなこと言ったのか分からない」と、双方違う意味で、ただ茫然としていました。
不動産会社を後にし、その後、お客様に延々と説明をしました。言っていいこと、悪いこと、また不動産業界での常識など、ご理解いただくのにかなりのエネルギーを費やしました。
最初に言っておけば良かったと思いましたが、まさかの展開でした。
●お詫びしました
そして、改めて不動産会社に赴き、先日のお詫びをし、事情をお伝えし、どうにか契約をとお願いしました。
私としても、不動産会社やら、金融機関やら、かなりの手間をかけて、何とかここまで来たわけですから、こんなことでご破算ではやってられません。
時間はかかりましたが、どうにか先方の怒りも収まり、やっと土地契約の運びとなりました。
●と・こ・ろ・が・です!!
土地契約後しばらくたって、お客様よりお電話がありました。なんと!「あの信用金庫は信用できないからダメ。」とのこと、思わず「うそでしょ!」と言ってしまいました。
何でも、当初聞いていた金利が、審査の結果少し高くなったとのこと。その可能性はあると説明を受けていた訳ですが、可能性が高いのか低いのか、どのようなニュアンスで説明されたかまでは分かりません。一緒に行っておけば良かったと、この時も後悔しましたが、後の祭りです。
何はともあれ、まず「そこ以外貸してくれるとこ無いですよ、さんざん探したではないですか」と、当時を思い出してもらおうと一生懸命お伝えしましたが、全く聞く耳持たずです。「信用できない。自分で探す」との一点張り。
とは言っても土地の決済期日は決まっているわけで、もう時間はありません。結果、時間切れです。土地の契約は白紙となりました。
そして建物の計画自体、無くなりました。