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木造工場は“理想”ではなく“現実の選択肢”

稼働から2年、現場が語る木造の手応え

「木造の工場は本当に大丈夫なのか?」そう尋ねる経営者の方は、今も少なくありません。でも、実際に現場に立って話を聞いてみると、その答えはもう出ていると感じました。木造で建てた工場が、しっかりと稼働し、成果を上げているのです。

今回訪れたのは、岐阜県にあるアルミ製品メーカー「工和製作所」さんの主力工場。
約50年続く企業が、分散していた3つの製造拠点を1つに集約し、2階建ての大型木造工場を建設されました。設計・施工を担当したのはHAGIホーム・プロデュースさん。稼働から2年半が経ち、木造を選んだ判断がどのような結果をもたらしたのかを伺いました。

鉄骨から木造へ――判断の分岐点

当初は鉄骨造を前提に進めていた計画。「工場だから鉄骨が当然だと思っていました」と宮崎社長は振り返ります。しかし、試算を重ねるうちに建築コストの壁に直面。

そのとき、HAGIホーム・プロデュースさんから「木造でも可能ですよ」という提案があったそうです。

実際に木造工場の事例を見学し、性能とコストの両面から検討した結果、16mスパンの無柱空間を持つ木造構造を採用しました。建物の建設費の抑制だけでなく、基礎や地盤改良費の削減、断熱性能による光熱費の低減など、合理的な判断が後押ししました。

夏も冬も快適な作業環境

稼働から2年半。真夏の暑さや冬の寒さの中でも、工場内は安定した環境を保っているそうです。
宮崎社長から「鉄骨のときのような底冷えがなくなりました。特に女性スタッフから“冷えがなくなった”という声が多く、足元が冷えないので朝の立ち上がりが早くなったように感じます」とお聞かせいただきました。

実際、暖房を入れていない朝でも室温は15℃前後を保ち、冷暖房の稼働率が下がったことで光熱費も抑えられ、快適な作業環境が生産性と経営効率の両方を支えているようです。

音と空気のやわらかさ

鉄骨造の頃は、機械音が反響して会話が届きづらかったそうです。「木造に変えてからは、機械が動いていても静かに感じます、空気がやわらかく、油や金属のにおいも少なくなりました」と宮崎社長。木材が音を吸収し、声が通るようになったそうです。

数値では表せない快適さ。それが働く人の集中力や安全意識を高めていることを、現場の空気そのものが物語っていました。

生産ラインの集約で生まれた効率化

3つの工場を1つにまとめたことで、横持ちの運搬が不要になり、作業動線が大幅に改善されました。フォークリフトの使用回数が減り、動線の短縮によって安全性と生産効率が向上しています。

見学に訪れた人からは「きれいで働きやすそう」という声も多く、採用にも良い影響が出ているそうです。宮崎社長は「工場というより“職場”という言葉のほうが合うかもしれませんね」と笑顔でお話くださいました。

現場を見せることが信頼につながる

竣工後から見学の問い合わせが相次ぎ、これまでに400人を超える来場者が工場を訪れたそうです。夏と冬には“体感ツアー”を実施し、実際の温熱環境を見てもらう機会を設けています。

この工場を訪れた経営者の中には、「次は自社でも木造で」と考える方も増えているそうです。

木造がもたらす“経営の余白”

木造を採用した効果は、建築費の削減だけではありません。設備更新の柔軟性、光熱費や保険料の抑制、働く人の定着率向上――それぞれの成果が積み重なり、企業に“経営の余白”を生み出しています。

「もしもう一度建てるとしたら、また木造を選びます」

木造は、環境への配慮だけでなく、経営を持続させるための現実的な選択肢として広がりつつあります。

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