\ プロの話を聞いてみよう! /無料で家づくりを相談する

建て替え vs リフォーム|家族の本音と、後悔しない判断ポイント

「壊すなんてもったいないよ。ずっとこの家でやってきたんだから」
築40年を超える木造住宅に暮らすK様のご両親は、そう強く反対しました。一方、K様ご自身は「耐震性に不安がある。建て替えたほうが安心だ」と主張。娘さんも「受験の時期に仮住まいは避けたい」と困惑気味――。

思い出と安全、そして暮らしやすさ。それぞれの視点が交錯する中、話し合いは平行線をたどっていました。そんなK様ご家族のリアルな葛藤をもとに「建て替え」と「リフォーム」どちらを選ぶべきか、ご家族で冷静に整理できる判断軸と選択肢をアドバイスした例をご紹介します。

新築かリフォームかで検討する際のポイント3つ

・建て替えとリフォームのメリット・デメリット
・家族で意見が分かれたときの合意形成のヒント
・判断を進めるための3つの視点

「この家、どうする?」K様ご家族のリアルな悩み

東京都郊外に暮らすK様ご家族(42代夫婦・小学生の娘さん・ご両親)。築40年の木造住宅は、現在の耐震基準を満たしていないことを報道番組で知り、水回りの老朽化や水漏れも進行していました。

「思い切って建て替えよう」と話すK様に対し、「壊すのは忍びない」とご両親は反対。さらに娘さんも「仮住まいは負担が大きい」と消極的。

将来の安心と今の暮らしのバランスに悩みながら、ご家族は結論を出せずにいました。

住宅診断を経て浮かび上がった3つの課題

K様ご家族の築40年のご自宅について、まず住宅診断(ホームインスペクション)を受けることをお勧めしました。これは、将来的なリノベーションや修繕を検討する前に、建物全体の健全性や安全性を専門家の目で確認するためのステップです。

後日、住宅診断の結果をもとにK様と現状を改めて整理し、次の3つの明確な課題が見えてきました。

・耐震性の不安
この家は1981年以前、つまり旧耐震基準時代に建てられた建物であることがわかりました。診断では、基礎や壁の構造に目立った損傷はないものの、「現在の耐震基準には適合していない可能性が高い」という評価に。
大きな地震のたびに不安を感じていたというK様ご夫妻にとって、この指摘は「やっぱりか…」と納得できるものでした。

・水回りと配管の老朽化
キッチン・浴室・トイレといった水まわり設備は、目視でも老朽化が明らかな状態。さらに住宅診断では、床下に湿気や漏水の兆候があり、配管の劣化や微細な漏れの可能性も指摘されました。こうした状態を放置するとカビや構造材の腐食につながり、将来的な大規模修繕のリスクが高まることもK様にお伝えしました。

・断熱性能の不足
K様が長年感じていた「冬の底冷えと夏の暑さ」の原因も、診断によってより明確に。外壁や床下に断熱材がほとんど入っておらず、窓もシングルガラスのままだったため、エネルギー効率の悪さ=冷暖房の効きにくさが直接的な要因でした。
光熱費が年々上がっていることにも納得がいき、「昔の家って、やっぱり断熱が弱いんですね」とおっしゃっていました。

このように、住宅診断を通して「見えている問題」と「見えていなかった問題」の両方が整理され、住まい全体の課題を客観的に捉えるきっかけになりました。

「リフォームで十分?」の検討

「全部建て直すのは大変。部分的なリフォームで済ませたい」——そんな考えも当然のこと。ただし、構造自体が劣化している場合は、表面的な補修では安心できないことも。実際に見えない部分にこそ、大きなリスクがあることをK様ご家族もご理解いただけました。

建て替えで得られる安心と快適性

一方で建て替えには、耐震性・断熱性ともに最新基準で整えられるという安心感があります。住宅性能が上がることで、快適性が増し、光熱費も抑えられるなどメリットも多く、ご夫妻は「それなら将来の不安も減らせそうだね」と前向きに。
ただ、ご両親にとっては長年住み慣れた家を手放すことへの寂しさもあり、簡単には割り切れない気持ちが伺えました。

建て替えの現実的な負担

メリットが大きい建て替えですが、現実的な負担も無視できません。半年以上の工期、仮住まいの手配、引っ越しの手間、そして予算面。特に娘さんの中学受験期と重なることから、「今すぐの建て替えは現実的ではない」という判断になりつつありました。

整理した「3つの判断軸」

K様ご家族が「建て替えか、リフォームか」で揺れながらも、客観的データを目の当たりにすることでやるべき方向が見えてきました。さらにご家族間での合意形成をとるために、「まずは考える軸を整理してみましょう」とアドバイスしました。
そのときのポイントが、次の3つの視点です。

・安全性をどう確保するか
建て替えなら最新の耐震基準に適合できます。リフォームでも、必要な部分だけ補強すれば一定の安全性は確保可能です。「全部やり直さなくても、ピンポイントで対応できる」ということを知り、K様も少し安心された様子でした。

・家族の思いと価値観の違い
思い出を守りたいご両親と、将来を見据えるK様。どちらの意見も間違いではなく、それぞれの立場の違いがあるだけ。その違いを受け入れたうえで、「どう話し合うか」が大切になっていきました。

・費用と将来の見通し
建て替えには2,500万〜3,500万円程度の費用がかかる一方、性能や資産価値の向上といった長期的なメリットも。リフォームなら100万〜2,500万円と予算に応じて調整ができ、段階的に進めるという選択も可能です。

K様ご一家が選んだ「段階的アプローチ」

最終的にK様ご家族は、「まず暮らしの不便を解消すること」を優先しました。キッチンや浴室、トイレのリフォームを先に実施し、同時に最低限の耐震補強も行うことに。

そして、K様ご夫婦が50歳になる頃に建て替えを視野に入れ、娘さんの進学が落ち着いたタイミングで再度検討するという方針で合意。思い出を残しながら、将来への備えも整える“中間的な答え”を見つけたのです。

マッチングコーディネータの視点!

建て替えかリフォームか。その正解はご家族ごとに異なります。さらに世代ごとの価値観の違いが話を難しくしているケースが多いのも事実です。親世代は「思い出」や「慣れた暮らし」に価値を感じる一方、子世代は「性能」や「効率」を重視する傾向ある、という考えの違いが、しばしば選択の障壁となります。

そのために有効なのが、耐震診断や劣化調査といった客観的なデータの活用です。感情的になりがちな家族会議も、数値に基づいた情報を元に進めれば、冷静な判断につながります。

また、「いま結論を出す」ことにこだわらず、「段階的に進める」や「将来を見据えて計画を立てる」といった柔軟な考え方や選択も十分に現実的です。

まずは「耐震診断」と「劣化調査」の依頼を検討してみてください。これらは、現在の住まいの状態を正確に知る第一歩です。