「自分の趣味を思い切り楽しみながら、家族との暮らしも大切にしたい」。
そんな想いから注文住宅を検討するご夫婦は少なくありません。
今回ご紹介するのは、釣り好きのご主人と陶芸が趣味の奥様。夫婦それぞれの趣味を満喫しつつ、心地よく暮らせる家を求めて相談されたケースです。
後悔しないための3つの視点
・趣味空間と生活空間の距離感をどう取るか
・音、におい、湿度など“見えにくい課題”を初期に検討する
・土間やガレージなど半屋外空間をどう活かすか
趣味空間と生活空間の距離感
H様ご夫婦(40代)は、夫が釣り、妻が陶芸を趣味にしており、家づくりの中で一番に考えたのが趣味部屋の確保でした。
・夫:釣具を洗って乾かし、そのまま収納できる土間スペースが欲しい
・妻:電動ろくろと小型の窯を置ける陶芸スペースを希望
・共通:家族の生活空間とは切り離したい
釣具の水滴や湿気、陶芸で出る土や粉塵。さらに窯を使うときの熱やにおい。これらをリビングや寝室と同じ空間に持ち込むのは現実的ではありませんでした。
音・におい・湿度など“見えにくい課題”
実際に趣味部屋をつくる方の多くが直面するのが、音・におい・湿度管理です。
・釣具の洗浄時の水はね → 排水計画や床材選びが欠かせない
・窯を使うときの熱やにおい → 換気・排気経路を事前に確保する必要がある
・湿度管理 → 釣具はサビやカビを防ぐため通気性のよい場所で保管が推奨される一方、
陶芸用の粘土は乾燥しすぎを避けたいなど、趣味によって求められる条件が異なる
この「必要な環境条件の違い」が、施主自身では判断しにくい大きなポイント。後から「においがリビングに広がる」「道具が劣化する」と後悔しないためにも、設計初期に必ず確認すべき要素です。
土間+趣味室か、ガレージ活用か
H様が検討したのは「専用の趣味室を設けるか」「ガレージを活用するか」という2つの案。
土間+趣味室案
- メリット:趣味専用空間で生活との切り分けが明確。片付けも効率的。
- デメリット:延床面積を圧迫しやすく、断熱・換気の追加コストも必要。
ガレージ活用案
- メリット:車+趣味道具の置き場を兼ねる効率的な使い方。DIY趣味にも応用可能。
- デメリット:外気の影響を受けやすく、湿気や騒音対策が必須。家族空間への影響を避ける工夫が求められる。
最終的にH様夫婦は「土間+趣味室」を選択。
玄関横に水回りを備えた土間を設け、釣具の洗浄から乾燥・収納までを一連で完結できるように、陶芸スペースは北側に配置し、窯の排気経路を設けられました。
「生活空間と切り分けられたことで、気兼ねなく趣味に没頭できるようになった」とご夫婦ともに満足されています。
マッチングコーディネータの視点!
これまでのご相談でも、趣味部屋を希望される方は多いですが、「音・におい・湿度・水回り」の4点を軽視して後悔するケースをよく耳にします。
工務店に要望を伝える際は、
・どんな作業をするのか
・どのくらいの頻度で使うのか
・日常の掃除やメンテナンスをどこまで自分たちで担えるか
この3点を具体的に整理してから伝えることが大切です。
趣味部屋は“贅沢”に見えて、実は暮らしの満足度を大きく左右する空間。要望の優先順位を言語化して工務店に伝えることが、納得の家づくりへの近道です。