目次
高齢者にも使いやすい住宅を考えることは、今現在、高齢者と同居している方だけに限ったお話しではありません。
自分が歳をとった時に備えて、20年、30年といった長い目で住宅を計画しておくことはとても大事なことです。
また、高齢者向け住宅と言うと、一般的に手すりや昇降機などの設備で対処する方法がすぐに思い浮かびますが、それだけでなく、プランニングそのものを工夫することで、高齢者にとって「やさしい」住宅を計画することも可能です。
基本的な留意点
1)日常的な動作の妨げとなるものを排除する。
開けにくい「重い扉」、部屋間のスムーズな移動を妨げる「段差」や「狭い廊下」が生じないように計画を立てることが重要です。また、日常生活の移動が楽に行えるように、高齢者の寝室とトイレ、浴室などの各部屋はできるだけ近く配置することがポイントです。
2)事故を引き起こす可能性のあるものを排除する。
転倒の可能性がある「床の段差」や「滑りやすい床材」、ヒートショックを招く恐れがある「部屋間の温度差」、誤操作の危険性がある「複雑な設備機器」などは極力使用しないようにしましょう。
3)補助装置(設備)を設置するか、将来設置できるように備える。
階段、トイレ、浴室などの「手すり」、「エレベーター」などの移動を助ける設備を設置しておくか、将来設置できるように想定しておくことが重要です。
将来設置できるようにしておくには、当初からスペースを確保し、下地を補強しておくことが必要です。
部屋別のポイント
・洗面所
洗面台は、椅子に座っても使用できる高さにしておきましょう。収納スペースは、常に手の届く範囲で計画をしておくことが大事です。
・浴室
浴室の扉は、アクリルガラスなどの割れにくい素材を選びましょう。またぎやすい高さの浴槽を選んだり、腰掛を設置するなど、洗い場と浴槽との移動に配慮が必要です。
・台所
特に安全面への配慮が重要です。電磁調理器具は、火を使わないので比較的安全と言われていますが、使い慣れていない方にとってはかえって不便な部分もあるようです。
部屋の用途に関らず、
1)介護を想定した広めのスペースを確保しておく。
2)引戸等、開閉が楽な建具を選ぶ。
3)水に濡れても滑りにくい床材を選ぶ。
4)水栓金具やドアハンドルは、レバー式等の操作性が高いもの選ぶ。
5)照明や設備機器のスイッチは、大型のものを選ぶ。
6)緊急時に備えてブザーを設置する。
などは、最低限考慮しておきましょう。
これらを充実するには、コストの問題を避けて通ることができません。
設備の貸与や高齢者対応の住宅改造に助成金制度を設けている行政もありますので、積極的に利用しましょう。
さらに機能面だけでなく、プライバシー、家族間のコミュニケーションなど、高齢者の心理面にも十分考慮して計画を立てることが重要です。