\ プロの話を聞いてみよう! /無料で家づくりを相談する

ローコスト住宅

「コストを抑えて良い住宅を建てたい」という思いは、施主であれば誰もが抱く思いです。

しかし、「ローコスト」というのは、そう言えば住宅が安くなる、というような魔法の言葉ではありません。その意味や内容をしっかり理解した上で計画に臨むことが大切です。

家には適正価格がある

いろいろなものに適正な価格があるように、住宅にも適正な価格が存在します。過剰なスペックや無駄な工程を省くことは大切ですが、コスト削減だけを目的としてしまうと、「安かろう悪かろう」という家になってしまいますし、何より大切な安全かつ快適な家を実現するための基本性能が疎かになってしまいます。

ローコスト住宅をつくるに当っては、しっかりした基本性能を確保しつつも、施主自身が要望を整理し、無駄なコストを抑えるように心掛けることが重要です。

また、ローコスト住宅と狭小住宅を両立させようというお考えの方を多く見受けますが、ローコスト住宅のコツはなるべくシンプルにつくりこまないことであり、一方、狭小住宅のコツはちょっとした空間も無駄なく有効に活用する、同じ空間を多目的に使用できるようにする等、細部まで気の行き届いた計画が必要です。

狭小住宅を必要以上のローコストで建てようとすると、ただ狭いだけの不便な家になってしまいますので注意が必要です。

成功のポイント

以下は、ローコスト住宅を成功させるためのポイントです。

・安全かつ快適に住むための基本性能を確保する

(1)敷地条件によって発生する費用

敷地に高低差があったり、地盤が弱い土地の場合、擁壁や地盤改良の費用がかかります。
これらの費用は決して安くない上に、新しくできる建物に装備として加わるものではありません。物として見える費用ではないので、つい軽視されがちですが、住宅の安全性を決める上で最も重要なものです。工夫次第では多少のコストダウンも可能ですが、必要以上にコストを絞ることは大変危険です。

(2)構造や断熱にかかわる費用

構造、断熱といった基本性能にかかわる部分は、家の価格の多くを占めます。たとえローコスト住宅でも、妥当性のある予算の範囲で計画を進めていかないと、住宅にとって最も大切な基本性能が疎かになってしまいます。これらの基本的なところには、割り切って気持ちよく予算を割くという心構えが大切です。

・今までの生活や考え方を見直す

(1)シンプルな計画をする

部屋を細かく仕切らずに間取りをシンプルにすることによって、複雑で個室の多い計画よりもコストを削減することができます。ざっと挙げただけでも、建物の外壁、部屋を仕切る壁、ドア、戸、造り付けの収納など、シンプルにすればするほどコストを抑えられる要素があります。また、間仕切りを多くして部屋の使い道を限定してしまう計画よりも、家族構成の変化やお子様の成長に応じて、各部屋の使い方を変えることができるという積極的な考え方もできます。

(2)多くの素材を使わない

使う材料の種類が増えるほど、材料を仕入れる際のスケールメリットは働きません。バラバラの素材を使うよりも、材料を統一することでコストダウンが可能です。さらにこれは、工事の種類を減らすことにもつながります。

例えば部屋によって、壁の仕上げに漆喰を使えば左官屋さんが、クロスを使えばクロス屋さんが必要です。違う素材を使えば、それに伴って工事の種類も増えることになります。しかし、全ての材料をクロスに統一すれば、職人さんも1つの工種にまとめることができるので、手間賃を削減することができます。

(3)余分な贅肉を削ぎ落とす

予算に限りがあればあるほど、材料や素材の選択肢もコストのかからないものから選択していかなければなりません。そういう意味では、残念ながら選択肢は限られてしまうでしょう。しかし、素材自身の持つ風合いを活かした計画ができれば、余分な「お化粧」のコストを削減できます。「鉄は鉄」、「木は木」というように、素材そのものを「スッピン」のまま活かし、余分な仕上げを極力少なくしていくことは、コストを削減するばかりではなく、アイディア次第で豊かな空間の演出も可能になります。

(4)要望の整理と割り切り

予算内に費用を収めることが最も大事と考えるなら、残念ながら「あれもこれも」というわけにはいきません。もちろん造り付けの家具をつくった方が部屋はスッキリするでしょうし、床暖房を入れた方がより快適なことは確かです。しかし、それで予算をオーバーしてしまったらどうでしょう。

・予算を守ることが最も重要なのか

・費用がかかっても最初から造ることが重要なのか

・費用がかかるのであればその分を他にあてた方がいいのか

・今できないのなら将来にまわすことができるのか

その都度、要望の整理をしながら、割り切った計画を進めていく必要があります。

(5)できることは自分でやる

材料だけでモノを造ることはできません。それを造る人の作業費が必要です。家の場合も職人さんの手間賃なしに家を造ることはできません。しかし、「自分でできる範囲は自分でする」、「安い材料をヒマを見つけて探す」ことを惜しまなければ、この費用も軽減することができます。多くのローコスト住宅は、施主自身が壁を塗ったり、安い材料を建築家と一緒に探し回ったりという、手間と努力の末に実現されていることが多いのです。

(6)ローコスト住宅に実績のある建築家や工務店を選ぶ

上記のような内容を判断し選択していくことは、施主にとって簡単な作業ではありません。プロとしてアドバイスができる信頼できる建築家や工務店を見つけるが大切です。

多くのローコスト事例にかかわってきた建築家は、単に工務店を競争させてコストダウンを図るようなことはしません。競争で工務店に無理なコストダウンを強いることは、最終的に工事の仕上がりや性能にしわ寄せがいくことを知っているからです。ローコスト住宅の経験が豊富な建築家は、どこにコストがかかりそうかという予測ができ、施工者側から見ても納得のいくコストダウンのノウハウを持っています。

また、工務店はそれぞれが安く仕入れられる材料を持っていたり、他の現場で出た材料の余りが倉庫に眠っていることもありますので、それらを使うことありきで計画すれば、かなりのコストダウンも可能です。しかし、建築家や工務店にとってローコスト住宅は経済的には歓迎できる仕事ではありません。その労をいとわず、ローコスト住宅を実現する情熱を持った建築家や工務店を家づくりのパートナーとすることが大切です。

(7)施主自身が計画をリードする

要望だけ伝えて人任せにせず、施主自身がパートナーとの信頼関係を築く努力を常に怠らないことが大切です。

前述のように、ローコスト住宅には計画に関わる建築家や工務店の情熱が必要であり、その情熱を維持するためにも、施主自身がパートナーに常に感謝の気持ちをもちつつ、自分が計画を引っ張っていく位の情熱を持ち続けることが大切です。

逆に、「客だから」という意識でパートナーに接すると、ローコスト住宅ではなく、ただ単に「安物の家」になりかねませんので注意が必要です。