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木造工場ここまでできる!国内初・天井クレーン4基の建設レポート

「木造工場なんて本当に大丈夫なのか?」──そう疑問を持つ経営者は少なくありません。
しかし近年、非住宅の分野でも木造活用が広がりを見せています。その背景には、建築コストの抑制・快適な作業環境・環境配慮といった経営的メリットがあります。

今回ご紹介するのは、岐阜県を拠点とする 登録工務店・HAGIホーム・プロデュース さんが施工する国内初の「天井クレーン4基を備えた木造工場」。建築中の現場を訪問し、そのスケール感と技術的挑戦、さらに経営判断に直結するメリットを体感してきました。

木造工場の可能性

「木造」と聞くと、多くの方は住宅や小規模施設をイメージするのではないでしょうか。ところが今、工場や倉庫、事務所といった非住宅分野でも木造建築が広がりつつあります。

その理由は明快です。

・鉄骨造に比べて建築コストを抑えられる
・断熱・調湿性に優れ、快適な職場環境が実現できる
・脱炭素社会に向けて、環境配慮を示せる

とはいえ、気になるのは「本当に耐久性や強度は大丈夫なのか?」という点。今回の事例は、その疑問に答える一つの証拠となるものでした。

建築中の現場に立って感じた迫力

見学した工場の延床面積は 3,524㎡
1階が52m×50m、2階が34m×12m、天井高さは7.5m。体育館を思わせる大空間です。

実際に現場に立つと、木造であるにもかかわらず鉄骨造の工場に入ったような迫力。梁や柱が整然と並び、そのスケール感に「本当に木でできているのか?」と驚かされました。

木材ならではの香りが漂う一方で、見た目の印象は鉄骨の力強さそのもの。「木造でもここまでできる」という実感を、数字と空間の両面から突き付けられる現場でした。

こうした「大規模木造」の工場建築はまだ珍しい存在です。しかし、HAGIホーム・プロデュースさんの現場を目にすれば、木造工場が鉄骨に劣らないスケールと迫力を持ち得ることが実感できます。


重量物を扱うための設計工夫

この工場の最大の特徴は、1t荷重対応の天井クレーンを4基設置すること。

鉄骨造であれば当たり前の設備ですが、木造工場で実現するには高度な構造計算が必要です。

・荷重を梁やトラスに分散
・クレーンの始動・停止時に生じる衝撃を吸収
・長期使用による木材の変形リスクも考慮

一つひとつ検証を重ねることで、木造でも重量物を安全に扱える仕組みを実現しています。つまり、鉄骨でしかできないと思われていた領域に木造が進出した、大きな一歩なのです。この技術は、工場オーナーにとって「木造工場でも本当に使えるのか?」という不安を払拭する要素になります。


ホイストクレーン

非住宅ならではの合理的設計

もう一つ印象的だったのは、工場棟に窓がない設計でした。

「木造=明るく心地よい」というイメージを持つ方も多いと思います。しかしこの工場では、直射日光や外気が機械に影響しないよう、あえて窓をなくし、換気システムを導入。ミーティングや休憩スペースは工場の同じ建物内に設けられた2階部分に配置され、快適性を補っています。

これは、住宅的な「快適さ」より工場としての合理性を優先した木造設計。木造だからといってデザインや仕様に縛られるのではなく、むしろ柔軟に対応できるということを示しています。

地域工務店の挑戦

施工を担うのは、岐阜県の HAGIホーム・プロデュースさん。社員わずか7名の工務店です。

この規模の工場建築は、ゼネコンの領域と思われがちです。しかし、設計事務所や専門職人と協力体制を組むことで、地域工務店でも大型木造に挑めることを証明しました。

板谷社長はこう語ります。「私たちのような規模の工務店でも、知恵とネットワークを生かせば非住宅木造に挑戦できます。この現場が、その背中を押す存在になれば嬉しいです」

中小企業オーナーにとっても、身近な工務店が頼れるパートナーになる可能性を感じられるのではないでしょうか。

木造工場は「人にも経営にもやさしい」

HAGIホーム・プロデュースさんから伺った話で印象的だったのは、木造が「人にも経営にもやさしい」という点です。

人にやさしい

 ・木材は鉄より熱伝導率が低く、外気温の影響を受けにくい
 ・夏は涼しく、冬は暖かい快適な作業環境を実現
 ・室温の変化が少なく、保管する商品の品質も守りやすい

経営にやさしい

・木造でも準耐火構造にでき、火災保険料を抑えられる
・鉄骨造に比べ、地盤改良費や基礎工事費が安い
・倉庫用途の場合、鉄骨造の耐用年数は31年、木造は15年。
 → 木造の方が減価償却期間が短いため、年間の償却費を多く計上でき、建築直後の節税効果が高い
 → 特に借入返済が重なる建築直後の時期に、資金繰りを助ける仕組みとして中小企業には大きなメリット。

つまり、木造工場は「働く人に優しく、経営にも優しい」選択肢といえるのです。

今回見学したのは建築中の現場ですが、すでに木造工場を建てて稼働している企業もあります。例えば、同じくHAGIホーム・プロデュースさんが手掛けた アルミ加工工場は、稼働2年半で「コスト削減」「快適性向上」「企業価値アップ」を実感しているとのこと。

今回の国内初「天井クレーン4基を備えた木造工場」の事例は、木造が工場建築の現実的な選択肢になりつつあることを示しています。

・鉄骨造に比べてコストを抑えつつ快適性を確保できる
・重量物対応など、鉄骨でしかできないと思われていた設備も実現可能
・地域工務店との協力で、中小企業でも導入しやすい

木造工場はもはや特別な挑戦ではなく、経営判断として十分に検討できる選択肢です。

ザ・ハウスでは、工場や倉庫などの木造建築のご相談も承っています。検討段階から事例紹介、依頼先選びまで幅広くお手伝い可能です。ぜひこちらの特設ページもご覧ください。
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