いくら言葉を重ねても、お互いの頭の中まではわかりません。特に抽象的な言葉は、発する方も受け取る方も、全く同じ認識になっているかというと、はなはだ疑問です。
家づくりを何度も経験しているお客様は少なく、ほとんどの方は初めてです。となると自分たちの要望を伝えるときも、具体的な専門用語などわからないので、ついつい抽象的な言葉を交えて伝えることになってきます。
双方同じ認識だといいのですが・・・
実際のお話
●展示場が気に入りました
そのお客様は都内でご商売をされていましたが、そこの土地を売却して、東京から地方へ、終の棲家を建てて移り住もうとのご計画でした。
何社かご検討された中からお選びいただいたわけですが、決め手の一つが、モデルハウス。特に玄関ホールの吹き抜けが開放的で気に入ったとのことでした。
間取りのご要望にも「こんな感じの吹き抜けをつくって欲しい」とありました。
当然、ご提案のプランにもそれは反映され、何度もプランの変更はありましたが、吹き抜けだけは変更ありませんでした。
そしてご契約を頂きました。その後の打合せも順調にすすみ、もろもろ手続きも完了し、着工の運びとなりました。全く問題なく計画は進行していきました。
●工事中、営業マンへの電話は大抵良くない話
そして上棟も終わったある日のこと、お客様よりお電話をいただきました。
お叱りの電話です。電話先でのお怒りのようすが伝わってきます。たいへん怒っています。
なんでも、現場を見に行ったところ、玄関が吹き抜けになっていないとの内容です。
バタバタと最終図面を引っ張り出して確認しましたが、特に問題なさそうです。
「いやいや、そんなはずないですよ。ちゃんと最終の図面も吹き抜けになっていますよ!」とお話しましたが、絶対見間違いではないとのこと。
「モデルハウスのような感じでと、何度も伝えていたのになんでこんなことになっているんだ!」と、さらに怒りが増してます。
そして、「なんで玄関の上に木があるんだ!」とのお言葉・・・
あっ!と思いました。
確かに梁が掛かっています。
一口に吹き抜けと言ってもその形はさまざまです。1階から2階の天井まで何もない直方体の吹き抜け。2階の天井が勾配天井になっている吹き抜け。また構造材が見えている吹き抜け。
うーん、確かに確認してないぞ・・・
私としては、「構造上必要なものは必要」ぐらいにしか考えていませんでしたので、詳しく確認も説明もしていませんでした。
●違う吹き抜け
そして、モデルハウスの吹き抜けは、1階から2階の天井まで何もない直方体の吹き抜けでした。それに対して現場の吹き抜けは、構造の梁などが出ていて、確かにモデルハウスとは違います。吹き抜けの空間に確かに木が見えてます。
お客様が言う「こんな感じの吹き抜け」の中に梁などは存在していなかったのです。
結果としては、構造材を架け替え、お客様のイメージする吹き抜けに、会社負担でつくり直すことになりましたが、大変不愉快な思いをさせてしまった私の失敗談です。