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新任コーディネータ、まさかの施主になる【1】実家の建替えを決めた日

実家を建て替えると決めた日

私は、家づくりをサポートする会社「ザ・ハウス」で働いています。
お客様と工務店をつなぐコーディネータとして、「家づくりの始まり」に寄り添うのが私の仕事です。
けれど、そんな私自身が家を建てる立場になるなんて、少し前までは想像もしていませんでした。
しかもきっかけは、家族が増える等の夢や希望のある前向きな理由ではなく、「実家を建替えなければならない現実」でした。

思い出の家に訪れた変化

私の実家は、バブル期の後半にハウスメーカーで建てた木造住宅です。
外壁は淡いモカ色、三角屋根にはコロニアル瓦。白い手すりとフェンスがアクセントになっていました。
1階には父の動物病院を併設しており、当時は「ペンションみたいで可愛い動物病院」と近所でも評判でした。
その言葉を聞くたびに、子どもの私は誇らしく思ったものです。

けれど、年月というものは本当に正直で残酷です。
床のきしみやたわみが気になり始め、玄関には雨漏りが発生。ベランダはエアコンの室外機の重みで傾き、落ちかけていました。
冬になると底冷えし、暖房を入れてもなかなか暖まらず、朝は息が白くなるほど。
家事動線も、建てた当時は「若いファミリー層」向けだったため、洗濯機が1階で物干し場が2階という構造がつらく感じられました。
外観こそ十年ごとの修繕で綺麗に保たれていましたが、家の中では確実に「老い」が進んでいたのです。それでも、私も家族もこの家に愛着があり「手直しすれば大丈夫だよ」と言いながら暮らしていました。

そんなある日、母が腰を痛めて手術を受けました。
もともと足が悪かった母ですが、手術後は階段の上り下りがますます大変になり、1階の風呂場から2階の寝室に上がるにも苦労するようになりました。
その姿を見て、胸の奥がざわつきました。

同じ頃、父も「そろそろ動物病院を閉めようと思う」と言い出しました。
三十年以上、地元密着型でやってきた病院の看板を下ろす――その言葉を聞いた瞬間、家の中の空気が少し変わった気がしました。
治療台やレントゲン機器、犬猫用のケージが少しずつ搬出されていくのを見ながら、私は「この家と家族の時間が、ひとつの区切りを迎えている」と実感しました。

展示場をめぐってみたけれど

「両親がまだ動ける今のうちに、この家をどうにかしなければ」
そう思って、まずは1階の動物病院を母の生活スペースにリフォームできないかと考えました。
けれど、建築当時のハウスメーカーに相談すると、材料費の高騰や工法の変更などが理由で「全面的な改修は難しい」とのこと。
「この金額をかけるなら、建て替えたほうがいいですよ」と言われ、頭の中が真っ白になりました。
それから休みの日は住宅展示場めぐりが始まりました。

最新の設備やラグジュアリーな内装を見るのが楽しく、最初のうちはワクワクしていました。
吹き抜けのリビング、光あふれる大きな窓、収納たっぷりのアイランドキッチン。
見学するたびに「素敵」「こういう家に住めたら」と夢がふくらみます。
けれど、帰り道にふと我に返るのです。
母や自分がそこに暮らす姿が、どうしても思い描けない。
提示された見積書を見たとき、その夢は静かに現実に戻りました。

ローコストのハウスメーカーにも足を運びました。営業担当の方の説明は丁寧でしたが、どこか噛み合いません。「安さは魅力的だけれど、何か大切なものが抜けている気がする」――そんな違和感が拭えませんでした。

並行して、工務店の一括見積サイトにも登録してみました。
届いた資料はどれもきれいで、会社紹介も分かりやすいのですが、実際に話してみると、どの会社も「悪くはないけれど決め手がない」のです。
しかも、申込みのたびに一から説明し直すのが思いのほか負担で「家づくりって、こんなに孤独で大変なんだ」と、ため息をついたのを覚えています。

仕事を通して見えてきたこと

そんな迷いの最中、私は社内で「工務店マッチングサービス」を担当することになりました。
新任コーディネータとして、お申込みくださったお客様の最初の窓口を担当する仕事です。

お客様にお話を伺っていると「展示場に行ったけれど決めきれなかった」「営業の人にうまく要望が伝わらない」という声が本当に多く聞かれました。
その一つひとつが、まるで過去の自分を見ているようで、電話越しにお客様の気持ちが痛いほど分かり、何度もうなずいていました。

ザ・ハウスのサービスは、予算や延床面積などの条件だけで工務店を紹介するものではありません。
お客様の想いを丁寧に伺いながら、考えを整理し、お好みに近い工務店をご紹介していきます。
価格の比較ではなく、「自分に合う会社と出会う」ことを大切にしている点が特徴です。

コーディネータの仕事を通して、私は気づきました。
なぜ自分が実家を建て替えたいのか――その根本を、いつの間にか見失っていましたことに。

古くなった家をただ建直すことが目的ではなく、高齢になった両親でも安心して暮らせる居場所を整えること、それが本当に私のやりたいことでした。
そして、そのために必要なのは、誰かに頼る勇気でした。

自分ひとりで考えていた頃は、ハウスメーカーも工務店も選択肢が多すぎて、正解がどこにあるのか分かりませんでした。
でも、人と話すことで、自分の想いが形になっていく感覚を、私は仕事を通じて知りました。
「自分ひとりでは進めなくても、誰かと一緒なら進める」
その気づきが、私の中で“絶望”だった建て替えを、“希望”へと変えていきました。 そして私は、静かに心を決めました。
――自分の家づくりを、自分の会社のサービスで始めてみよう。

次回予告

次回は「資金計画」と「家族会議」を経ていよいよ工務店マッチングサービスに申し込むまでの流れをレポートします。
家族の本音と、現実との折り合い……リアルな「家づくりの第一歩」をお伝えします。


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