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実家の近くに建てる家―「近居」でちょうどいい距離感とは?

実家近くで家を建てたいけれど・・・

T様(子世帯)は、都内の実家近くで土地探しを始め、気になる土地がでてきた30代後半のご夫婦。奥さまのご両親は都心近郊で暮らしており、まだ健康ではあるものの「将来の医療付き添いや日常の頼みごと」で近くに住めたら安心だと感じていました。一方で、親との距離を近くしすぎると干渉が始まりそう、プライバシーが失われそう……という不安も頭をよぎります。

実家近くに建てるときのポイント3つ

・近居・同居・二世帯住宅、それぞれの特徴と比較視点
・距離感・干渉度・動線などを軸に判断するポイント
・実際の事例から、選ばれた形と選ぶまでの葛藤・決断

近居か二世帯住宅か

実家に住む親の近くに家を建てるといっても、その距離感や住まい方にはいくつかのスタイルがあります。代表的なものとして「近居」と「二世帯住宅」があります。

【近居】
別々の建物に住みながら、徒歩圏や車ですぐ行ける距離に暮らすスタイルです。近くて便利そうですが、実際には以下のようなメリット・デメリットがあります。

●メリット
・子世帯と親世帯、それぞれの生活リズムやプライバシーを保ちやすい
・介護までは不要でも、買い物や通院の付き添いなど軽いサポートがしやすい
・子育て中の場合、親の助けを得やすい(急な預かりなど)
・距離があることで、適度な干渉で済む場合が多い

●デメリット
・親からの突然の訪問や干渉が心理的なストレスになることがある
・近いからこそ「世話をして当然」と思われやすい
・同居に比べると、緊急時の対応に少し時間がかかる

【二世帯住宅】
親世帯と子世帯が同じ建物に暮らすスタイルは「完全同居型(すべての設備を共有)」「部分共有型(玄関は一緒だけれど、キッチンは別など)」「完全分離型(全ての設備を別に設置)」などがありますが、共通してあげられるメリット・デメリットには以下のようなものがあげられます。

●メリット
・緊急時や介護が必要になったとき、すぐに対応できる安心感がある
・設備や光熱費を一部共有することで、コスト面で効率化が図れることもある
・家族の絆を感じやすく、交流の機会が増える

●デメリット
・プライバシーが確保しづらく、生活リズムや価値観の違いがストレスになることも
・共有部分の使い方でトラブルが起きやすい(音、掃除、訪問など)
・家のつくりによっては、将来的に売却や賃貸への転用が難しくなる

T様が選んだ“ちょうどいい距離感”

T様が検討したのは「完全な近居」「敷地内別棟(二世帯)」、そして「玄関のみ共有の半同居型」という3つの案。それぞれに良さと不安がありましたが、最終的に選ばれたのは、「玄関共有・生活空間分離型」の半同居スタイルでした。

決め手になったのは、親との距離がゼロになりすぎず、必要なときにはすぐに行き来できる安心感。
日常生活ではお互いのプライバシーを尊重できるよう、水回りやキッチン、リビングは完全に分けて設計。
生活リズムや家事スタイルの違いがストレスにならないよう配慮しました。

一方で、完全分離型ではなく玄関だけ共有するスタイルを選んだことが、ひとつの妥協点。実は最初、完全分離型も検討していましたが、建築費が想定より大きくなったことや、購入検討していた敷地形状では玄関を2つ確保するのが難しかったためです。そこで、動線を工夫して“玄関からすぐに別々の生活空間へアクセスできる”間取りを採用し、生活の独立性を守る設計に仕上げました。

T様ご夫婦は「心配ごとがあってもすぐに様子を見に行けるし、普段はお互い干渉せずに暮らせている」と話します。親御さんも「何かあったときは声をかけられるけど、それ以外は静かに暮らせるから気が楽」と満足されているとのことです。
この“物理的には隣接していても、心理的には適度な距離感”が、T様ご家族にとっての最適解となりました。

マッチングコーディネータの視点!

二世帯住宅を成功させるには、敷地設計とルール設計が大変重要です。
・敷地設計で境界線と導線を明確化すること
・初期段階で家族観でのルールを言語化しておくこと
・可変性を織り込むこと
・建築コスト・維持コストを意識した設計

これらを家族観できちんと話をしておかないと、あとからでは必ずトラブルの元に発展します。
「どこまで親と交わるか/どこから自分たちの領域を守るか」を家族で言語化し、設計者(工務店)に「この距離感を実現したい」と伝えられる準備をしておきましょう。