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ザ・ハウス社長 矢野が考える、2020年の住宅市況

ザ・ハウス代表 矢野

2020年、皆様にとってどのような年だったでしょうか。コロナ禍の影響で生活が一変したという方も多いのではないかと思います。ザ・ハウスでもリモートワークが定着し、オンライン面談が当たり前となりました。

では住宅に関してはどうだったのでしょうか。一年の最後に、ザ・ハウス社長の矢野にインタビューをする形で今年の住宅市況について聞いてみました。

2020年の住宅需要の変化

加藤:今年の全体的な住宅需要の変化ってありましたか?

矢野:僕は経済アナリストじゃないので、あくまでも現実に現場で起きたことと、可能性の話をお話ししますね。

コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、家にいる時間が長くなり、皆さんの住宅への関心が高まったように感じています。

緊急事態宣言が解除された6月からは、展示場来場者数も主要ハウスメーカーの受注金額もおおむね好調だと聞いています。

現場で感じるコロナ禍の需要の変化としては、「小さな動き」と「大きな動き」という対局の動きがありました。

「小さな動き」というのは、多額の費用は掛けずに家具で対処できるくらいの工夫。部屋を仕切るためのパーテーションを買うとか、長時間の仕事に耐えうる机や椅子を買うとか、そういう家の中でのちょっとした工夫。こうしたリモートワークの問題を家具で解消しようという需要は多かったと思います。

「大きな動き」というのは、住んでいる場所そのものを都心から郊外へ変えてしまうというもの。住宅業界では、特に緊急事態宣言が解除された6月以降、8月をピークにして分譲住宅を中心に戸建て住宅の受注が増えました。

秋口に湘南エリアの不動産会社から聞いた話だと、前年比で2〜2.5倍の引き合いがあったとおっしゃっていました。特に会社員で都心部にお勤め、リモート勤務で毎日勤務する必要がなくなった方が購入されているとのことでしたが、こうした都心から郊外に拠点を移す動きは数自体がそんなに多いわけではないと思いますが、アフターコロナの今年に特徴的な動きではあったのではないかと思います。

一方で「小さな動き」と「大きな動き」に比べて、その間の「中間の動き」、具体的にはアフターコロナの状況にあわせて今住んでいる家の間取りを変えよう、コロナをきっかけにリノベーションやフルリフォームをしようという動きは、私たちが知る限りでは顕著に見受けられなかったように思います。

ただ机や家具の購入など、これまで「小さな動き」でアフターコロナの状況に対応していた方も、経過措置ではなくリモートワークを常態にする企業がさらに増え、今後はこれでいくよ、という方針を明確に打ち出す企業が増えると、自宅に固定的な壁を作ったり、間取りを大幅に変更したり、といった家そのものに手を入れる投資に踏み切ることになるかもしれません。

お客様のご要望の変化

加藤:お客様の住宅に対してのご要望に変化はありましたか?

矢野:本質的な部分での大きな変化は感じられませんでしたね。コロナ以前も少しずつ変化していたことが、コロナを契機にして、より顕著な形で現れたという印象です。

コロナ以前も、ザ・ハウスにご相談に来られるお客様の中には、東京の会社に勤務しながら茨城県や長野県などに新居を構える方がいらっしゃいました。それまでも移動せずに業務を円滑に進めることができる環境はありましたし、リモートワークを始めとする働き方の多様化も進んでいましたので。

ただ、コロナという大きな出来事によって、通勤を優先して住む場所を決めなくてもいいんじゃないか、という考え方が顕著にみられるようになったのは確かな変化だと思います。

あとこれは僕自身の体験でもあるのですが、家でリモートワークするのが辛い時があって。うちは個室が小さく、リビングがオープンな間取りなので、妻も傍で仕事、子供たちも家にいるとなると、ウェブミーティングはちょっと厳しいですし、くつろぎたい時に脇で会議をしていたら、家族もストレスに感じるよなあと。

コロナ前って、家族との団欒やコミュニケーションを考えるとそういうオープンな間取りが良しとされていたところもあると思うんですけど、やっぱり寝るだけの個室ではなくて、最低限ワークスペース機能のある個室は欲しいよね、ということになるんじゃないかなと思います。

また家の中で過ごす時間が増えると、住宅にこれまでそれほど強く求められていなかったことが求められるようになるんじゃないかと思います。室内にいても日常的に外部を感じられる空間とか、日常的な用途として使える半屋外空間とか。実際にこうした家に住んでいる方からは、改めて家に外部空間があって良かったという声も聞かれました。

→ 建築家コラム 施主からの手紙

自宅(ファーストプレイス)でも、職場や学校(セカンドプレイス)でもない、自分にとって心地の良い時間を過ごせる第三の場所を「サードプレイス」といったりしますが、今や、住宅にすべてを溶け込ませてしまった方が自然のような気がしています。

多くの建築家にとっては外部空間とのつながりを考えるのは当たり前なところがあるので、特に目新しいことではないのですが、多くの一般の方にとっては、住まいと外部空間がつながる効用を実感するきっかけになったんじゃないかと思います。