住宅とIoT

2017年9月10日

スマートスピーカーで「住宅のIoT」が加速する!?

家はエネルギー、移動体、家電、シニア向けサービス等の産業の交差点

矢野 暁

ザ・ハウス マッチングコーディネーター

1969年、神奈川県出身。 ハウスメーカー、建築プロデュース会社を経て、(株)ザ・ハウスのマッチングコーディネータに就任。住宅、不動産業界に23年間従事し、住宅会社選びやトラブル解決等の相談実績は2500組を超える。「建築知識」、「建築・法律トラブルらくらく回避マニュアル」等の実務者向け書籍の寄稿も多数。

筆者

矢野 暁

「家はエネルギー、移動体、家電、シニア向けサービス等の産業の交差点」

これは「新しい常識で都市に住もう」との理念を掲げるHOUSE VISION(ハウスビジョン)の発起人でデザイナーの原研哉氏の言葉です。

2017年になって、様々なモノとインターネットがつながる「IoT」(Internet of Things)の動きが加速し、まさに今、日本の住宅のあり方が変わろうとしています。

住宅業界でもIoTは重要なキーワードになっており、経済産業省の主導のもとで、大手ハウスメーカーや住宅設備会社、電機メーカーやIT企業などがさまざまな実証実験がスタートしています。

●大手ハウスメーカーの主な取り組み

・積水ハウス
2017年3月にNTTデータなどとIoTのセキュリティ技術検討などを目的に異業種連携によるコンソーシアムを立ち上げ。首都圏の賃貸住宅を選定し、事業環境整備に向けた実証実験を行うことを発表。日本ユニシス、富士通、シャープ、アイホンなどと共に、機器間の連携・接続のルール、認証、製品安全、プライバシーなどの課題を検証。

・ダイワハウス
2017年4月に経済産業省の実証実験事業「IoTを活用したスマートホームクラウド構築及び検証」に参加。つくば市の戸建住宅30世帯を選定し、実証実験を行うことを発表。サービス連携を行う情報基盤システムを設置し、富士ソフト、NEC、ソニー、ヤフーなどと共に、稼働状況や利用環境についてモニター検証を行う。

・ミサワホーム
2017年4月にIoT活用サービスを発売。経済産業省の委託を受け、ミサワホーム総合研究所と産業技術総合研究所が国際標準規格案の策定の検証を行っている。渋谷住宅展示場にIoT機器を設置し、住宅内の様々な機器がコンフリクトやシステムダウンすることなく安全に連携するための検証を行う。

しかし、現状は各社があらゆる可能性を模索している段階でもあり、IoT住宅が今後どのような姿になっていくのか、わが身のこととして具体的なイメージがわかないのが正直な所です。

日本における「住宅のIoT」と言えば、太陽光発電や給湯、蓄電池などの供給や使用状況を一元管理するHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)、また住宅の消費エネルギーをゼロにすることを目指したZEH(ゼロエネルギー住宅)など、これまでは主に「エネルギー系」の取り組みが目立っていました。

これら「エネルギー系」のサービスは長期的に大変重要なものではありますが、私たちが日常生活の中でリアリティを感じる「住宅のIoT」としては、まだ少し縁遠い感があるのではないでしょうか。

●身近な「住宅のIoT」

住宅、そして住宅の中のあらゆるモノがインターネットとつながることで、私たちの暮らしはどのように変わるのでしょうか。

ひとつ身近な例で考えてみましょう。

たとえば、ご存知の方も多い掃除ロボットの「ルンバ」。

本体のボタンを押せば、掃除スタート。8月には一部の限定モデルを除いてルンバの全タイプがWi-Fiでネットワークとつながり、スマーフォンのアプリを使えば、外出先から掃除をスタートさせたり、スケジュールを設定することもできます。

2002年に第一世代モデルが発売されて以来、家づくりの現場では、ルンバを採用することを前提に「床に段差を付けないで欲しい」「ホームベース(ルンバの充電器)の格納場所を設けたい」という要望をちらほらと聞くようになりました。

夫婦共働き、子育て中の忙しい世代にとって、日常の家事が効率化され、実のあることに時間を割けるようになることは嬉しいことです。

でも、私と同じように不精な方はまだ不満に思うかもしれません。「ルンバのボタンを押さないと掃除してくれないの!?」と。

家のソファーで本を読んでいる時に、よっこらしょと腰を上げてルンバのホームベースまで行き、腰を屈めてボタンを押すのは面倒。外出先なら仕方がないにしても、家にいるのにわざわざスマートフォンのロックを解除し、アプリを開いて設定を入力するのも面倒なことです。

●スマートスピーカーで「住宅のIoT」が加速する!?

実はすでにアメリカでは、スマートスピーカーと連携することによって、音声でルンバを制御することが可能になっています。

スマートスピーカーとは、Wi-FiやBluetoothを通じて音声操作が可能な人工知能搭載(AI)のスピーカーのこと。スピーカー本来の機能だけでなく、家電製品などのモノとつながって、ユーザーの音声コマンドに応えて機器をコントロールしたり、情報を入手することが可能です。

たとえばGoogleのスマートスピーカー「Google Home(グーグル ホーム)」を例にすると、CMでもお馴染みの「Ok,Google!(オーケー グーグル!)」が音声コマンドになります。この音声コマンドに続いて指示の言葉を投げ掛けると他の機器を制御したり、情報を検索してフィードバックしてくれるのです。

アメリカの市場調査会社eMarketerによると、3,560万人のアメリカ人が少なくとも月に1度、スマートスピーカーを利用しており、前年比で128.9%増加したという調査結果が出ています(2017年5月)。

このスマートスピーカーが今年の後半から来年にかけて、いよいよ日本でもAmazon、Google、Apple、そしてLINEからも続々と発売される予定です。

ルンバの開発販売を行っているアイロボット社も「すぐというわけにはいかないが、早めに音声認識に対応したい」とコメントしており、いよいよ日本でもスマートスピーカーに話しかければルンバが掃除を始めてくれる日が早々にやってきそうです。

●スマートスピーカーとは?

現在、スマートフォンが全盛の中で、私たちはアプリを使うことに便利さを感じています。しかし、モノがインターネットとつながると、いちいちスマートフォンのロックを解除し、アプリを探して指示を入力しなければならない理由はなくなります。

スマートスピーカーがアメリカで受け入れられている一つの要因は、音声認識の利点である「ダイレクトに目的を達成できる」という点にあるのではないかと考えられます。かつてはITやデバイスに詳しい人でないと享受できなかった便利さを、「言葉を発する」というごく自然な人間の振る舞いによって獲得することができるようになったわけです。

<日本での発売が予定されている代表的なスマートスピーカー>

・Amazon Echo(アマゾン エコー)
小型のEcho Dotやディスプレイ付きのEcho Showがあり、バリエーションが豊富。搭載されているアシスタントは「Alexa」。

・Google Home(グーグル ホーム)
TVCMでもお馴染みの「Ok, Google!」がコマンド。Google検索に実装されている「ナレッジグラフ」を活用できるのが利点。

・Apple HomePod(アップル ホームポッド)
アシスタントはiPhoneにも搭載されている「Siri」。スピーカー本来の機能に優れた高品質サウンドとの評価あり。

・LINE WAVE(ライン ウェーブ)
搭載のアシスタントは「Clova」。日本語と韓国語に対応したAIのため、日本語での音声認識、LINEとの連携に期待がかかる。

現段階では、スマートスピーカーは様々なIoT機器のターミナルの位置を占める有力な候補と言えるかもしれません。いずれにしても、IoTによって私たちの生活が便利になるかどうかは、様々なメーカーのIoT機器が連携し合う「拡張性のあるプラットホーム」ができるかどうかにかかっています。

(矢野)