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親との同居を考える中で、「どこまで共有する?どこは分ける?」という悩みは尽きません。とくに、生活スタイルが異なる70代のご両親と、40代のご夫婦+中学生のお子さんという構成では、家族それぞれの快適さをどう保つかがカギになります。
今回は、70代のご両親と、40代のご夫婦・小学5年生の娘さんからなるF様ご家族の実例を通じて、完全分離と共有のバランス、現実的な間取りの工夫について掘り下げていきます。
1. 「完全分離が理想。でも現実は…」F様ご家族のスタートライン
「子ども家族とは一緒に暮らしたいけれど、お風呂や食事は別にしたい」——これはF様の70代のお父様が家づくりの初期からはっきり希望されていた点でした。
一方で、40代のご夫婦も「キッチンやリビングは気を遣わずに使いたい」「子どもの成長に合わせてプライベートは守りたい」と考えており、完全分離型がベストに見えました。
しかし、検討していた土地は約40坪。完全分離を理想としながらも、敷地の制約から、玄関だけは共有にせざるを得ませんでした。とはいえ、生活空間だけは譲れないという想いから、LDKや水回りは上下階に分けて、しっかりと分離する方針を固めました。
2. 選んだのは「生活機能を分離」——間取りの工夫で両立
最終的にF様が選んだのは、「玄関は共有しながらも、生活空間はしっかり分ける」完全分離に近いスタイルでした。
- ●1階に親世帯のLDK・寝室・水回りを集約し、ワンフロアで完結
- ●2階は子世帯のLDK+個室+子ども部屋で構成
- ●洗面室と浴室、キッチンもそれぞれ2つずつ設置し、上下階で生活機能を独立
さらに、玄関ホールには中扉を設け、互いの生活音や視線を遮りやすくしたことで、「気配は感じるけれど干渉しすぎない」距離感を保つことに成功しました。
お父様は「玄関が一つでも、帰宅後は自分の世界に戻れる感覚がある」と話し、小学5年生の娘さんは「おじいちゃんたちとは仲良しだけど、自分の部屋があってうれしい」と満足そうです。
3. 細かな“すれ違い”がトラブルの元に。音・時間・生活リズムのズレに要注意
F様が特に工夫されたのは、生活リズムの違いによるストレスをどう避けるか。
- ●洗濯機の稼働時間:タイマー付きの機種で“静音時間”を指定
- ●トイレの配置:上下階でズレない位置に配置し、排水音対策も強化
- ●食事時間:それぞれが気兼ねなく使えるよう、キッチン・ダイニングを別に
「気まずさが起こる前に、設計で気を利かせることが大事だった」とご主人。
🟡マッチングコーディネータの視点!
これまでの経験上、二世帯住宅での間取り相談は“間取り図”だけでは解決できないことが多々あります。なぜなら、
- 「親はどう過ごしていて、何を不便に思っているか」
- 「子世帯はどこで気を遣い、どこを守りたいと思っているか」
こうした“暮らし方の温度差”を図面に反映するには、まず生活スタイルの棚卸しが不可欠だからです。
「食事は分けたいけど、朝の見送りは一緒にしたい」など、少し矛盾するようなニーズも含めて、細やかにすくい上げていくことが、二世帯住宅成功のカギだと感じています。
まとめ|分けすぎず、干渉しすぎず。F様邸に見るリアルな二世帯住宅
「完全分離が無理なら妥協」ではなく、「暮らしの中で何を優先するか」を丁寧に言語化したことで、F様ご家族は心地よい距離感の二世帯住宅を実現されました。
二世帯住宅を検討中の方にとって、共有と分離の境界線はきわめて繊細な問題です。だからこそ、“図面に現れないこと”にこそ丁寧に向き合う必要があるのだと思います。
もし今、間取りのイメージにモヤモヤしているなら、一度「それぞれの1日の過ごし方」を書き出してみるのもおすすめです。きっと、見えてくることがありますよ。