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障がい者向け住宅

肢体が不自由な方と視覚や聴覚に障がいをお持ちの方とでは、それぞれ生活の中で「バリア」になる問題が異なります。

さらにこのバリアを解消するための方法は、障がいの内容だけなく、個々の考え方や生活慣習の違いによっても異なりますので、誰にとっても当てはまるベストな解決方法はないと言っていいでしょう。

その上では、まず自分自身の生活スタイルをしっかり考え、そして家づくりの依頼先や介助者と共に、バリアを解消する方法を1つ1つ選択していくというプロセスが欠かせません。

生活スタイルを考える

まず最初に、障がい者の方の「障がいの内容や重度」、「介護の要不要」、「生活習慣や使い勝手の慣れ」を考慮した上で、安全、かつ使い勝手を良くするために必要なものは何かを考えていくことが重要です。

例えば、身障者向け住宅は、段差がないことが望ましいと言われていますが、当然のことながら、車椅子を使用する方や視覚に障がいをお持ちの方にとっては、主に段差等が物理的なバリアになりますので、できるだけ平面で移動できる間取りが有効です。

しかし、聴覚に障がいをお持ちの方にとっては、聴覚で感じることができないことを別の方法で感じとるための工夫や、そのための環境づくりが大事になるため、必ずしも段差がないことが有効になるとは言い切れません。

段差がないことを問題にするよりも、家族の居場所や人の出入りを目で確認しやすい工夫、例えばスキップフロアや間仕切りを透過性の高いものにする等、視界をさえぎらない工夫をした間取りが有効になります。

また、同じ車椅子を利用する方でも、「外で電動車椅子を使用し、家の中では室内用車椅子を使用する」方と、「内外を問わず電動車椅子を使用」して生活している方とでは、生活スタイルが異なります。

さらに、内外を問わず電動車椅子を使用する方でも、「介助を必要としない方」と「日常生活のほとんどの場面で介助が必要な方」とでは、家づくりの考え方が異なります。

例えば、日常的に介助を必要とする方にとっては、プライバシーの問題や、介助者が安全で介助しやすい方法を考える必要が生じます。

バリアを解消するために必要な方法を考える

バリアを解消し、使い勝手を向上する方法には、大きく分けて以下の2つの方法があります。

・「設備・器具」を設置する
・「設計やプラン」を工夫する
例えば、「玄関の段差を無くし、車椅子での移動をスムーズにする」という問題を解消するためには、

・緩やかなスロープをつくる
・段差解消機を設置する
という方法が考えられます。

スロープをつくることは「設計やプラン」の工夫によって解消できますが、緩やかなスロープをつくるには、ある程度玄関まで長い距離が必要になります。

このように、立地条件上どうしてもスロープを設置できるだけの距離が確保できない場合には、費用は掛かりますが、段差解消機等の「設備・器具」を設置することによってバリアを取り除く工夫が必要です。

また、これらを考えていく前提として、設計者や施工者、介助者を交え、設計図上ではもちろん、可能な限り実際に動いてシミュレーションを重ねることが重要になります。

例えば、車椅子を使用する方がシミュレーションする際には、以下のことに注意することが必要です。

1)動作を助けるものは、楽に使える位置にあるか。

・手すり、リフト(上げ下ろし)の使い勝手。
・スイッチ、操作ボタンの高さ(手が届かない場所はリモコン)

2)余裕を持ったスペースは、確保できているか。

・一般に手動車椅子が360度回転できる最小の回転円は50センチ。
・電動車椅子が90度回転するのに必要なスペースは150×125センチ。
・介助が必要な方は、浴室、トイレなどに介助スペースを確保する。

3)稼動するものは、軽いもの、もしくは自動になっているか。

・建具は少なく、軽い素材の引戸が基本。
・スイッチ、ボタンは軽く触れるだけのものを。
・できるだけ自動、電動などで、本人、介助者の負担を軽くするもの。

これらの細かい内容を打合せていく中では、設計者や施工者とのコミュニケーションが大変重要になります。

自分の家づくりに関わるスタッフには、一般的なセオリーや先入観にとらわれず、自分が不具合に感じていること、自分にとって好ましい使い勝手を理解してもらわなければなりません。

特に図面を通じてのコミュニケーションが多くなるため、図面を正確に読み取ることができなかったがために、施工後に初めて不具合に気付いたということを防ぐためにも、十分なシミュレーションを重ねましょう。

何を優先するかを考える

生活スタイルを考え、バリアを解消するための方法の検討ができたら、後は「予算」という制約条件に照らして優先順位をつけ、採用するもの、しないものを決めていかなければなりません。

この段階までに、自分の生活スタイルをしっかり考えておき、さらにその価値観を設計者や施工者とも共有できていれば取捨選択の作業がスムーズに運ぶはずです。

また、将来の障がいの進行が予測できるのであれば、その各段階に対応した設計やリフォーム計画を前提にした設計を心がける必要があります。