神奈川県中郡大磯町 U邸
庭とつながる窓辺、風景に溶け込む家
家を建てようと思った経緯は?
子どもたちが独立した後、どこでどのように過ごすか、ということを何となく考えていました。
当時の住まいは都会のターミナル駅から徒歩圏にある小さな戸建てで、生活面でも教育面でも便利さを最大に享受していました。一方で、いつか、自然を感じながらゆったりした暮らしをしたいという気持ちがありました。
湘南地区で土地探しをしていたときに出会ったのが、今の大磯の土地でした。
北側に低い地山を背負うロケーションに一目惚れしました。
当初から建築家に依頼しようとお考えだったのですか?
当初はまったく頭にありませんでした。
最初の取っ掛かりとして、提案を依頼したのはハウスメーカーです。
部屋数や設備面のほか、家の佇まいや室内の雰囲気について「こんな家をつくりたい」というイメージだけは、たくさん持っていましたので、文章にイメージ写真を添えた要望を出して打診しました。
それなりに考えた提案をしてくれましたが、何かピンときません。
そこで「自由度の高い工務店を探した方がいいのかもしれない」と思い、ザ・ハウスに相談し、要望書を読んでいただいたところ、「こういうご希望なら、建築家と家づくりをされることをお勧めします」と提案されました。
それが、建築家との家づくりのはじまりです。
建築家・小野喜規さんにはどんなご希望を伝えたのですか?
当初は、長々とした要望を連ねてお伝えしていたと記憶しています。
小野さんとお話を重ねていくうちに「あれもこれも」ではなく、何を一番大事にするかが自然と整理されていきました。
重点を置いたのは、生活で中心になるのはダイニングであること、家づくりと庭づくりと一体のものとして進めることです。
庭との関係では、窓辺の佇まいを大事に考えたいと漠然と思っていましたが、小野さんが次々形にしてくださいました。
窓辺のありようについて、たくさんのアイデアと仕掛けをお持ちの建築家です。
また、庭づくりのために、私たちのコンセプトに応えてくれそうな造園家を探して紹介してくださっただけでなく、庭の打合せにも毎回オブザーバー役として参加し見守ってくださいました。我々だけでなく、造園家の方も心強かったと思います。
予算の制約がある中、耐震性能、LDKの床暖房、収納の広さなど、機能面もあまり妥協はしませんでしたので、ご苦労をおかけしたことと思います。
収納については、まとめてスペースを取るのでなく、各部屋に分散して小ぶりの収納スペースを設けることで折り合いを付けていただきました。
実際に生活していかがでしょうか?
とても満足しています。
パッと見に主張の強い装飾的意匠はないのですが、窓まわりや建具などを工業製品に頼らず、小野さんの独自のシンプルで洗練されたデザインを、職人さんたちが丁寧に手づくりしてくださった良さがあります。クラフトマンシップと言うのでしょうか、人の手がつくったものの温かみです。
窓を通した室内と南側の庭との繋がり感が素晴らしく、木や草が語りかけてきてくれるようなとても親密な感覚を味わっています。
一方で、北側の地山はLDKから望むことは諦めた分を、寝室以外になんと洗面所の高窓で取り返してもらいました。高所の細長い窓でも、毎朝毎夕、季節ごとに変化していく緑の様を確かめることのできる贅沢は格別です。
また、住んでみてより深く体感したのは、部屋ごとに窓ごとに、居心地が微妙に変わる面白さでした。
勾配天井、窓の大きさ、庇の奥行き感、光の取り入れ方、それぞれ緻密に計算された変化によるものなのです。
リビングダイニングは一続きの空間ながら、クランクして繋げられていることで、窓面の天上高が違います。
ダイニングは開放的な気分でリビングは落ち着く感じ。
洋風の障子越しに北側のほんのりした明るさを取り込む寝室は、しんとした静けさ・・・
家のどこにいても、楽しさがあるのです。
ザ・ハウスを利用しての感想は?
ザ・ハウスの存在がなかったら、建築家と家を建てることは多分なかったと思います。
どの建築家を選んでいいのか・・・
建築家との付き合いはどんなものなのか・・・
私たちには見当もつきませんでした。
その最初の扉を開けてくれたのが、ザ・ハウスでした。
これから建築家と家を建てる方に一言
私たちは、建築家との家づくりを選んで正解でした。
「家をつくる」という体験が、人間的で生き生きとしたものになりました。
建築家とのキャッチボールの過程を経たからこそ、工事中の大工さんや工務店の現場監督さんとも、人と人との繋がりを感じることができました。
建築家が職人さんを尊重し、一つのモノをつくる仲間として連帯感を持っている様子を横で見ていたおかげかもしれません。
家づくりの過程をも楽しみたい方には、少しの時間の余裕は必要かもしれませんが、ぜひ、建築家との家づくりをお勧めしたいと思います。