東京都世田谷区 Y邸
東京都世田谷区Y邸
家を建てようと思った経緯は?
住んでいた築25年のマンションの老朽化がきっかけでした。
とても便利な場所にあったので気に入っていたのですが、初めてマンションの役員を引き受けてみたら、建物全体の配管など、水回りの老朽化が限界にきていたことを知ってしまい、このまま住むには不安を感じました。
家を建てるのなら、自分達の好きな時にリフォームや建て替えができる方がいい!ということになり、一戸建てを考えるようになりました。
当初から建築家に依頼しようとお考えだったのですか?
最初は不動産屋さんに案内されるまま、何軒もの建売りを見てまわりました。
価格と平面図だけが載っている物件情報に胸ふくらませて見に行くのですが、どの家を見ても同じような外観で個性がなく、住みにくそうで、明らかに安っぽい建材を使っているのが素人の私たちから見ても判りました。
そこで、どうせ建てるのなら、狭くても私たちの生活スタイルにあった無駄のない暮らしやすい家をつくろうと考え、建築家に依頼する事になりました。
建築家・納谷 学・新さんにはどんなご希望をお伝えされたのですか?
テイストとして、鉄骨はむき出しのままの仮設的な空間がいいということ。
11坪という狭い空間にもかかわらず、それまでの生活の中で「こうだったらなあ」と思っていた事すべてを伝えました。日曜大工をするためのワークスペース、広めのウォークインクローゼット、玄関のところに犬の足洗い場。きわめつけは星を見ながら入れる露天風呂。納谷さんも最初は驚かれていましたが、「面白そうですね。」と言ってくださった時にホッとしました。
実際に生活していかがでしょうか?
建坪11坪なのに、部屋の空間ひとつひとつが広々と感じられるところがとても気にいってます。図面上で見ていた時には、もっと狭いのかと思っていました。納谷さんや工務店さんがかなり苦労してくださったようです。
また、光が部屋全体に差し込んでいるのに、外部からの視線をまったく感じないので、家の中でとてもリラックスできます。
狭い敷地なので庭がないのですが、屋上で露天風呂に入ったり、ガーデンファニチャーをおいてセカンドリビングとして楽しんだり、リゾート地のような空気を感じることができます。希望通り、私たちのライフスタイルにピッタリあった無駄のない家だと思います。
ザ・ハウスを利用しての感想は?
土地は購入したものの、どこへお願いすればいいのかまったくわからず困り果てていたところ、インターネットでザ・ハウスを見つけました。建築家で家を建てるノウハウを一から丁寧に教えてくださったり、建築家の作風がわかる資料もたくさん揃っていて、とても参考になりました。それまで不安ばかりだった家づくりに、希望が持てるようになりました。本当に感謝しています。
これから建築家と家を建てる方に一言
私たちの場合、先生と呼ばなくてはいけないような建築家ではなくて、気軽に話ができる、同世代の方に依頼したいと思い、若手の建築家、納谷さんにお願いしました。思っていたようにリラックスしてお話しができましたし、自分達で100%これがいい!と思い提案すると、150%くらいにして答えてくれる方でした。
建築家との相性がいいと、家づくりをとても楽しめると思います。
はじめにYさんとお話ししてどんなことをお感じになりましたか?
初めてお会いした時のYさんの要望は、リビングをなるべく広くとか、明るい家にしてほしいとか、割りと一般的な要望だったのですが、打合せの最後に奥様が言いにくそうに一言。「お風呂に入りながら星を見るのが好きなんです。」
即座に「面白くなってきましたね。」と答えました。
物静かなご夫婦だという印象とは裏腹に、選ばれた土地や要望に「都市に住むという」人並み以上の強い意志を感じました。
具体的にはどのような形でご要望に応えていったのですか?
リビングを閉鎖感がなく広く感じさせる為に、外壁を薄くして水平の連続した窓を用意しました。
また、建物の外壁に大きい窓を開けたのでは、プライバシーが確保されない敷地状況だったので、家全体を明るくするため、建物のほぼ中央に光のボックスを挿入し、光が住戸の中央からもまわるように計画しています。
また、階段をエキスパンドメタルで製作し、光や風を屋上から1階の玄関まで届くようにしています。
そして最後に奥様が言われた要望に対しては、浴室を屋上にプラニングしていわゆる露天風呂の提案をしました。Yさんは屋上にお風呂は想定していましたが、ガラス張りの温室のような浴室をイメージしていたようです。
我々の提案を柔軟に受け入れてくれましたが、お風呂を使わない時でも屋上でくつろげるようにデッキを敷いたり、腰掛けられたり、寝そべったりできるような仕掛けも同時に提案しています。
Yさんとのお打ち合わせはいかがでしたか?
いつも仲良くお二人でみえられ、ご夫婦とも我々の提案に柔軟に判断していただけました。お二人とも口数はあまり多くはありませんでしたが、喜んでいる様子や思案している様子が伝わってきていたので、注意深く受取るように心掛けました。
引渡しの最後に「夢を叶えてくれてありがとうございます。」と言っていただけたので、この仕事の醍醐味と充実感をあらためて感じました。
これから建築家と家を建てる方に一言
新しい家を建てるということは、新しい生活がはじまります。
その家に何を求め、何を大切にしていきたいのか考えるチャンスでもあります。
そして、必ず家族の考え方と合う設計者がどこかにいます。
また、家に半永久的で腕時計のような精度を求める方がいらっしゃいますが、建築はそんな精度でつくられていません。住宅だからこそ、信頼出来て、一緒に思いを共有できるパートナーとしての建築家探しをされたらいいと思います。
建物について
- 所在地
- 東京都世田谷区
- 設計
- 納谷建築設計事務所
- 施工会社
- 渡邊技建(株)
- 竣工日
- 2004年1月
- 敷地面積
- 60平米(18.15坪)
- 延床面積
- 105.91平米(32.04坪)
- 写真撮影
- 吉田 誠