東京都世田谷区 S邸
「徒然草」の精神から学び得た、空気の澄んだ住宅
工務店との家づくり
周辺環境が良くて建築条件の無い売地を偶然見つけたのですが、いわゆる狭小地の第一種低層住宅専用地域でした。この土地の売主が某ディベロッパーさんで、希望の住宅が建つならば土地を買うという商談をしていたことから、早急な判断が必要となりザ・ハウスに伺いました。建ぺい率や容積率、北側の高さ制限が厳しいこの土地に、長く乗りたい車の保存のための2台分のインナーガレージ付の家というシビアな条件であることから、建築家の設計力に頼ろうと思っていましたが、工務店ご紹介サービスに変更しました。
初めてザ・ハウスで工務店の社長にお会いした時には、わざわざ木材のサンプルを持参して頂いて説明下さるなど非常に説得力がありました。我々からは細かいオーダーをしていないにも関わらず、設計はたった2回の打合せで、土地の売主の提案を超えるものが出て来ましたので、土地だけを購入することにして工務店と打合せを進めました。
良い設計が出来たと思い基本的な仕様にも満足している一方、売主の提案を断ってからかなり時間が経過していたので、早く工事請負契約を結んで安心したかったのですが、意外にも工務店からは「図面だけでなく詳細な仕様書と見積書を見てから決めて下さい」と言われました。大まかな見積りと設計で契約を迫る業者ではありませんでした。しかも様々な施工過程の建物や完成後に住まわれているお宅まで見せて頂きました。接着剤の臭いのしない、木の香りが印象に残りました。
結局、初めてお会いしてから契約に至るまでに3ヶ月を要した上、契約後も建築確認が降り着工するまでも細かい調整を重ね、さらに2ヶ月かかりました。これだけの時間を使い、構造材・断熱材・建具・設備など品質の高い建材を単価×数量でいちいち拾ってコストを計算しながら吟味を重ねて選択しており、建売価格よりは相当高い見積金額になりましたが全て納得して決めることが出来ました。
一顧客にここまで時間と手間を掛けていただくのも、念を入れ過ぎでは?とも思いましたが、後々のトラブル防止などにも役立っていると思います。
実際に暮らしていかがでしょうか?
我が家では「実用性を無視したデザイン」「○LDK的発想の間取り・部屋数」「集合住宅的な日照・南向き信仰」には全く囚われていません。旧来の日本家屋の何百年も継承されてきた伝統的な工法や間取り、徒然草の「住まいは夏を旨とすべし」の精神を信じ、これまでの数十年の生活体験から感じていた間取りや仕様などの好みを優先しています。
我が家は2LDK+2Sです。いわゆる押し入れというものは無く、納戸を各階に設けて衣類と荷物を仕舞い込み、不足分はロフトと地下にスペースを設けて収納しています。また、世間一般的には南窓を大きくとって「光」を入れようとしますが、直射日光を入れても夏は暑いだけなので我が家ではあまり大きくせず、「明かり採り」と夏の換気を考えて北屋根への天窓を設けました。西窓は通風用の窓一つしかありません。西日の暑さには散々苦しんできましたから、西には絶対開口したくなかったのです。
真夏・真冬はこれから経験するので未知数ですが、最低気温が4℃といった寒い日が続いた3月を経験した限りでは、真冬でもエアコン無しで過ごせそうです。床暖房の代わりにご提案いただいた深夜電力蓄熱式暖房機は、家全体が蓄熱しているように暖かくなります。外気との寒暖の差が驚くほど大きく、本当に木造住宅なのかと感心する毎日でした。断熱性能に負うところが大きいと思います。
また、VOC(揮発性有機化合物)やハウスダストによる健康被害(シックハウス)への対処も重要視していました。結婚して新調したタンスの横で寝ただけで翌朝激しい頭痛になり、結露などでサッシに生じたカビやエアコンのフィルターのダストの掃除をした翌日に風邪をひくなど「家の中の空気」に非常に敏感なのです。調湿機能を持ち室内の結露を防ぐといわれるセルロースファイバーの断熱材、薬漬けでない無垢の構造材や無垢のフローリング、ビニルでないクロス、化学品でない糊などふんだんに使用された等級基準外の自然建材といった工務店の基本仕様に加え、多少高価でもバーティクルボードなど極力廃した住設機器を選んだ結果、今の我が家では二日酔い以外に頭痛をもよおしたことはありません(笑)
土地と同様に家屋も資産であるべきで、万が一の売却のことも考えても資産性の高いものを建てる必要があると思っていました。今までは、施工業者が大手であるか否か(施工不良な欠陥住宅でないこと)が世間一般的に資産性も高いとされていましたが、大地震が相次いだ昨今では大手は耐震性を盛んに宣伝しています。ところが現代の日本の住宅は、土地取得コストの高さからローコストを追求するあまり、30年ももたない安い建材(もたせるために薬漬けにした建材)を使っています。耐震・耐風性は当然として、劣化対策性やVOC低減も含めた住宅性能トータルの高さが資産性の高さに繋がるべきですが、世論が理解するまで時間がかかるかもしれません。資産性を考える過程において、劣化しにくい建材はVOCを発するような建材ではなく強い建材であることが分かりました。それなりのコストはかかりましたが非常に空気の澄んだ家になり、世論はともかく個人的には大変満足しております。
ザ・ハウスの工務店紹介サービスについて
ザ・ハウスは、土地紹介メールサービスから受けていました。結果的にはザ・ハウスからの紹介の土地を購入したわけではないのですが、購入までの色々なアドバイスを受けることができ、ありがたいと思いました。また、狭小地をテーマにした『まじめな家づくりセミナー』などにも参加させていただき、家づくりの勉強をすることにより、建築だけでなく土地選びの参考にもなりました。
当初、建築家紹介サービスを受けるために店舗に行ったときには、建築家のリストと資料の中に我々の求めるものが無く、建築家のことについてお話ししていてもなかなか話が噛み合いませんでした。時間的に余裕を持たず設計力だけを求めて行ったこと、予算を安く提示しすぎたことが原因だったと思います。我々にもう少し、建築家の選択基準が整っていれば、もしかしたら建築家と進めていたかもしれません。
その後工務店が得意とする工法や建材での選択が話題になってからようやく話が噛み合うようになりました。やはり、我々には工務店さんのほうが合っていたのでしょう。工務店紹介サービスに移ってからはスムーズでした。
こうして工務店の紹介を受け、数社との面談の場を設けて頂いたわけですが、こうした紹介サービスだけでなくそれまでの数々のサービスの積み重ねがあって、今の我が家が具現化されたわけです。少々のボタンの掛け違いのような場面もありましたが、全体として大変満足しております。
建物について
- 所在地
- 東京都世田谷区
- 敷地面積
- 76.45平米(23.12坪)
- 延床面積
- 114.66平米(34.68坪)
- ※地下カーポート共
- 竣 工
- 2006年2月
- (掲載
- 2006年5月22日)