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住宅性能表示制度

この記事は2022年5月現在の情報をもとにしています。最新の情報は、「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」ウェブサイトでご確認ください。

住宅性能表示制度とは

住宅性能表示制度とは、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく制度で、良質な住宅を安心して取得できる市場の形成を目的としています。

具体的には、住宅の性能(構造耐力、省エネルギー性、遮音性など)に関して、適正に評価、表示するための共通ルールを設け、消費者が同じ「ものさし」で住宅を比較できるように考えられています。

例えばパソコンを買うとき、各社の製品の性能を比べようと思ったら、CPUの速度は何Ghzか、メモリは何GBか、ハードディスクの容量は何GBか・・・などといった基準で比較検討ができますが、住宅にはそのような分かりやすい基準がありませんでした。

そういった基準が無いと、それぞれの建築会社が独自の判断で「地震に強い家」、「省エネの家」等と好きなように表現することができてしまいます。
そのような独自の判断基準ばかりが溢れてしまうと、消費者が何をもって「地震に強い」、「省エネ」等を判断すれば良いのか分からなくなってしまいます。

そこで、分かりやすい「ものさし」を設け、「地震に強い」、「省エネ」等の定義を明確にしようというのが住宅性能表示制度です。

4つの安心ポイント

住宅性能表示制度を利用し認定を受けるかどうかは建て主の任意ですが、建設住宅性能評価書が交付された住宅については、家づくりの不安を解決する次のメリットがあります。

・第三者の専門機関が公正にチェックしてくれる。
・住まいの性能をわかりやすく表示できる。
・万一のトラブルにも専門機関に相談できる。
・性能に応じて住宅・ローン金利や地震保険料の特例がある。

一方で、住宅性能表示制度で定められた基準を満たすためには、設計の内容や使う建材などに制限が生じる場合や、これによって建築コストがアップすることも考えられるため、制度の利用を総合的に検討する必要があります。

第三者機関のチェック

国土交通大臣に登録を行った第三者機関である登録住宅性能評価機関が住宅の性能評価を行います。評価は設計段階と現場検査が行われ、その結果は設計段階の評価である「設計住宅性能評価書」と、建築中の評価である「建設住宅性能評価書」の2種類交付されます。

※新築の戸建て住宅は、一般的に4回の現場検査が行われます。
1回目 基礎配筋工事の完了時
2回目 躯体工事の完了時
3回目 内装下地張り直前
4回目 竣工時

新築住宅の性能表示基準

新築住宅は10分野・33項目についてそれぞれ基準が設けられており、主に住宅の外見や簡単な間取り図だけでは判断しにくい項目が設定されています。また、各分野の一番低い基準の「等級1」は、建築基準法で定めらた基準と同程度に設定されています。

この性能表示事項は下記ような10の分野に区分され、このうち4分野10項目は必須項目です。それ以外の選択項目については申請の際に評価を受けるかどうかを選択します。なお、2022年10月より、「5 温熱環境・エネルギー消費量に関すること」の「5-1 断熱等性能等級」および「5-2 一次エネルギー消費量等級」の両方の評価取得が必須となっています。

1. 構造の安定に関すること
2. 火災時の安全に関すること
3. 劣化の軽減に関すること
4. 維持管理・更新への配慮に関すること
5. 温熱環境・エネルギー消費量に関すること
6. 空気環境に関すること
7. 光・視環境に関すること
8. 音環境に関すること
9. 高齢者等への配慮に関すること
10.防犯に関すること

1. 地震などに対する強さ(構造の安定)

地震発生時などの倒壊のしにくさや損傷の受けにくさを評価します。等級が高いほど地震などに対して強いことを意味します。この他、強風や大雪に対する強さに関する評価もあります。

耐震性については倒壊や損傷のしにくさを等級1~3で表示します。耐震等級3は建築基準法レベル(耐震等級1)の1.5倍の強さがあります。

地震発生時に、大規模な修復を要する損傷が生じないことや人命が損なわれるような壊れ方をしないことが目標に設定されています。

2. 火災に対する安全性(火災時の安全)

耐火性は火災時の安全を確保するための対策について7つの項目を評価します。この基準では、住宅内や近隣の住宅などで火災が発生した際に、安全に避難や脱出ができるように、外壁や窓がどれくらいの時間、火熱に耐えられるのかを等級により表示します。

3. 柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)

柱、梁、主要な壁などの構造躯体に使用されている材料に対して劣化の進行を遅らせるための対策がどの程度講じられているかを等級1~3で表示します。等級3は3世代(概ね75~90年)まで構造躯体がもつことが想定されています。

4. 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)

住宅の給排水管やガス管は、内壁や外壁などで隠されてしまうことが多いため、あらかじめ工夫しておかないと、水漏れ、排水口のつまりなどの事故が発生した際の点検や補修が困難となります。この項目では点検口が設置されているかなど、給排水管やガス管の維持管理(掃除、点検、補修)のしやすさを等級1~3で表示します。

5. 省エネルギー対策(温熱環境・エネルギー消費量)

新築時点から対策を講じておくことが特に重要と考えられる住宅の外皮(外壁、窓など)の「断熱性能」を等級1~7で、設備(暖冷房、換気、給湯、照明)の性能や創エネルギー(太陽光発電設備など)を総合的に評価した「一次エネルギー消費量」を等級1~6で表示します。

脱炭素社会の実現に向けて住宅の省エネルギー性能を一層向上させるため、2022年に断熱等性能等級5~7、一次エネルギー消費量等級6が新たに設定されました。

6. シックハウス対策・換気(空気環境)

住宅室内での健康への影響の原因として指摘されているホルムアルデヒドについて、建材の選定と換気対策がどのように講じられているかを評価して表示します。建材からの発散量の少なさを等級1~3で表示します。その他、住宅の完成段階で室内の化学物質の濃度を実測して表示することも可能です。

7. 窓の面積(光・視環境)

住宅の窓には、日照、採光、通風といった物理的効果に加えて、眺望、開放感、やすらぎを得るといった心理的なものがあるといわれます。この基準では、これらの効果も見込んだ上で、開口部の面積と位置についてどの程度の配慮がなされているかを評価して表示します。

8. 遮音対策(音環境)

共同住宅の各住戸間で発生する騒音問題を削減する観点から「足音や物の落下音などの伝わりにくさ」、「話し声などの伝わりにくさ」、「騒音の伝わりにくさ」を高める対策が、どの程度講じられているかなどを評価して表示します。

9. 高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)

高齢者等への配慮のために必要な対策が住宅内でどのよう講じられているか「移動時の安全性」と「介助の容易性」という2つ視点から、手すりの設置や段差の解消などがどの程度講じられているかを等級1~5で表示します。

10.防犯対策

住宅の防犯性を向上させるには、次の4つの原則を守ることが有効であるといわれています。この基準では、住宅の被害防止の観点から「住宅の開口部における侵入防止対策」を表示する内容になっています。

・周囲からの見通しを確保する(監視性の確保)
・居住者の帰属意識の向上、コミュニティ形成の促進を図る(領域性の強化)
・犯罪企図者の動きを限定し、接近を妨げる(接近の制御)
・住宅の部材や設備を破壊されにくいものとする(被害対象の強化・回避)

トラブル時に専門機関へ相談が可能

万一、建設住宅性能評価書が交付された住宅でトラブルが起きた場合、一級建築士による無料の電話相談(住まいるダイヤル)や、同じく無料の建築士・弁護士による対面相談が受けられます。また、全国の弁護士会(指定住宅紛争処理機関)が迅速な解決を図る紛争処理(申請料1万円)を利用することもできます。

※参考:公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)

住宅ローン金利や地震保険料の特例

・住宅ローン金利の優遇
フラット35では省エネルギー性、耐震性など質の高い住宅に対して、住宅の性能に応じて
当初5年もしくは10年、年0.25%借入金利を引き下げる制度があります。

・地震保険料の割引
住宅性能評価を受けた住宅は耐震性能の等級などに応じて地震保険料が割引されます。
(耐震等級3:50%、耐震等級2:30%、耐震等級1:10%、免震建築物:50%)

申請方法について

全国に100以上ある指定評価機関の中から、建設地の近くの評価機関を選んで申請します。

・新築の場合
評価機関に申請を行うには、設計図書などの書類をそろえる必要があります。そのため
申請を行う場合は、設計を依頼している住宅会社や建築家に早めにご相談ください。

・既存住宅の場合
その住宅を「買う人」、「売る人」、「仲介する人」、「居住者」、「所有者」、「管理者」の
誰でも申請は可能です。ただし、立ち入り検査等もあるため、当然ながら所有者の同意は必要に
なります。住宅性能評価を受けていない中古住宅を買う場合、所有者の同意を得て、評価の申請
をおこなうのもひとつの手段です。

詳しくは「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」ウェブサイトをご覧ください。