工務店などの工事を請け負う会社に対しては「品確法」、「瑕疵担保履行法」によって法的責任が明確ですが、建築士の法的責任については、未だあいまいな部分が残っています。
「耐震偽装事件」が社会的な問題となり、平成19年に建築士法が改正されました。
これによって、「建築士事務所の開設者は、設計等を委託しようとする者の求めに応じ、設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結その他の措置を講じている場合にあっては、その内容を記録した書類を閲覧させなければならない」ことが義務付けられました。
「建築士」としての責任が、より明確に求められるようになったわけです。
しかしながら、個人の設計事務所は財務基盤が弱く、賠償責任が発生した時には、責任を果たせない可能性があります。これらの事情を背景に生まれたのが「建築士賠償責任保険」です。
◆建築士賠償責任保険とは
日本国内において、建築士または補助者による設計・監理業務ミスでその建築物に物理的滅失、もしくは損傷などの事故が発生し、建築物や他人に損害を与えた時、法律上賠償しなければならない損害を補償する保険のことをいいます。
具体的な例としては、
・換気計画の配慮不足のため天井材が腐食して天井が剥離した。
・構造設計上の考慮が足りず、積雪の重みで屋根が落ちた。
・計算にミスにより、設計図書で指定した配管の排水能力が足りず、オーバーフローした。
・ベランダの手すりを基準通り設計したが、室外機を近くに設置し、室外機に乗った子供が手すりから転落してけがをした。
などが補償の対象になります。
※補償内容、金額は各保険によって異なります。
この保険は施主自身が加入するものではなく、建築士が被保険者となるものです。
現時点では、建築士の保険加入は義務ではありませんが、依頼先を検討する際には事前に確認することをお勧めします。