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工務店のメリット・デメリット

工務店に依頼するという選択肢

注文住宅を考えるとき、多くの方が悩まれるのが「どこに依頼するか」ということです。

ハウスメーカー、設計事務所、そして工務店。特に「工務店」は、地域に密着した存在である一方で、情報が少なく実態が見えにくいという印象を持たれがちです。「融通が利くって聞くけど、品質は大丈夫なの?」「小さい会社が多そうで不安」といった声もよく耳にします。

そこで今回は、私たちが、これまで数多くの家づくりをサポートしてきた経験をもとに、工務店という依頼先の魅力と注意点についてお伝えしたいと思います。

参考→工務店って何?
参考→ハウスメーカーのメリット・デメリット
参考→設計事務所のメリット・デメリット

工務店とは?──ひとくくりにできない多様な存在

「工務店」と一言で言っても、実際の姿はさまざまです。
数人で運営されている小規模な会社から、社員100名を超える中堅規模の企業まで規模も体制も幅広く、設計に力を入れている会社、施工を主軸にしている会社、デザイン志向の会社など、その方向性にも大きな違いがあります。

この多様性こそが工務店の特徴でもあり、魅力でもあります。
一方で、「どんな会社なのか」が外からは分かりづらいこともあり、見極めが難しいという側面も否めません。

工務店の魅力~メリット

柔軟な設計対応と高い自由度

工務店の魅力としてまず挙げられるのは、設計の自由度の高さです。
規格化されたハウスメーカーと異なり、ゼロから間取りをつくる自由設計が基本。土地の形状や住まい手の暮らしに合わせて柔軟な提案をしてくれる工務店が多いです。

実際に、変形地に家を建てたいというご相談をいただいた際、ハウスメーカーでは対応が難しかった敷地条件を、ある工務店は「むしろ面白い敷地ですね」と前向きに捉え、敷地を活かしたプランを提案してくださいました。

このように、“施主の個性”を大切にした家づくりが実現しやすいのは、工務店ならではの良さだと感じます。

コストパフォーマンスの良さ

また、多くの工務店は広告費や人件費などの間接コストが抑えられており、建築費も比較的リーズナブル。「無理なく建てたいけれど、自由設計の家にしたい」というご要望には、工務店が良い選択肢になることが多いです。

都市部の狭小地や複雑な形状の土地でも、柔軟に対応してコストを抑えてくれる工務店もあります。全体の予算が限られている場合でも、工夫次第で満足度の高い住まいを実現できる可能性があります。

顔の見える家づくりと関係性の近さ

工務店では、設計者や現場監督、社長などと直接顔を合わせることが多く、家づくりのプロセスを「一緒に歩む」という感覚になりやすいです。ご相談の中でも、「担当者の人柄で決めた」というお声をよく耳にします。

家づくりは、細かいことの積み重ね。だからこそ、コミュニケーションの取りやすさや信頼関係の築きやすさは、結果的に家の満足度に大きく影響します。

工務店の注意点~デメリット

設計の幅と施工の効率性のバランス

自由設計が魅力とはいえ、すべての工務店が建築家に近い提案力を持っているとは限りません。施工を主業務とする工務店では、使い慣れた素材や工法を優先する傾向があり、結果として設計の幅が制約されるケースもあります。

また、特定の設備や工法を前提にしている工務店や、フランチャイズに加盟している工務店では、自由設計といってもある程度の“枠”があることも理解しておく必要があります。

施主の希望を形にする提案力は、工務店ごとに差があるという前提で、実例や担当者の話をじっくり確認することが大切です。

監理体制と品質チェックの仕組み

工務店やハウスメーカーでは、設計・施工・監理が同一組織内で完結することが多く、第三者によるチェック(設計監理)は、法的に定められた最低限の検査のみとなるのが一般的です。

そのため、チェック機能が働きにくいという面は否定できませんが、地元密着で信頼を重視する工務店の多くは、責任感を持って誠実な施工を行っています。

また、近年では、自社負担で第三者検査機関による現場チェックを導入している工務店も増えており、品質確保への意識も高まりつつあります。選ぶ際には、こうした監理や検査の体制についても事前に確認しておくと安心です。

情報の少なさと比較の難しさ

工務店は、ハウスメーカーに比べて広告や広報に力を入れている会社が少なく、WEBサイトが簡素だったり、施工事例が限られていたりすることがよくあります。そのため、初めての方にとっては、工務店ごとの違いや得意分野が分かりにくく、比較が難しいと感じられることも多いようです。

また、社長や担当者の人柄、設計への姿勢、現場対応の丁寧さなど、数字やスペックでは測れない要素こそが、工務店選びでは大きな決め手になります。見えづらいからこそ、焦らず、直接話を聞いたり、施工例を見せてもらったりしながら、自分たちに合った工務店かどうかをじっくり見極めることが大切です。

保証体制とアフターサポート

新築住宅の保証については、どの依頼先であっても基本的な仕組みは法律で統一されています。

施工者は、住宅の品質確保促進法(品確法)および住宅瑕疵担保履行法に基づき、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、引き渡し後10年間の瑕疵保証を行うことが義務付けられています。さらに、万が一の倒産に備えて、瑕疵保険への加入または保証金の供託といった資力確保措置も必要とされています。

この制度は、工務店・ハウスメーカー・建築家のいずれに依頼しても共通です。

加えて、工務店によっては20年・30年などの延長保証や定期点検など、独自のアフターサービスを用意しているところもあります。保証内容は会社ごとに異なるため、内容や体制を事前に確認しておくと安心です。

ローンの組みやすさ

住宅ローンの審査は、現在では借りる人の信用情報(年収・勤続年数・借入状況など)が最も重視されるため、依頼先が工務店であること自体が、直接的に通りやすさに影響することは少なくなっています。

ただし、一部のメガバンクでは、施工会社にも審査が入ることがあります。特に中小規模の工務店や、これまで取引のない会社については、施工実績や財務状況などを確認される場合があります。一方で、ネット銀行などでは施工会社の審査はほとんど行われず、あくまで借主本人の属性に基づいた審査が一般的です。このため、希望する金融機関によっては、工務店の規模や知名度が審査に影響する可能性もあることを、あらかじめ知っておくと安心です。

また、一定の実績を持つ工務店では、金融機関との手続きや書類準備に慣れており、スムーズにローン申請を進められる体制を整えているところもあります。

ローンを含めた資金計画については、早めに方針を立て、必要に応じて金融機関や施工会社に相談しながら進めるのがおすすめです。

工務店が向いている人、そうでない人──選び方が家づくりを左右する

工務店は、「自分たちらしい暮らしを、じっくり相談しながら形にしたい」という方に向いています。
話し合いを重ね、生活スタイルに合わせて細かな要望を反映していく──そうしたプロセスを楽しめる方にとって、工務店はとても頼もしいパートナーになるでしょう。

一方で、「完成されたプランを効率よく進めたい」「選択の手間をなるべく省きたい」といった方にとっては、設計や素材選びに関わる工程が負担に感じられることもあります。

だからこそ重要なのは、自分たちに合った依頼先を選ぶことです。

工務店には、設計の自由度やコストパフォーマンス、人との距離の近さといった大きな魅力があります。しかし同時に、会社ごとの違いも大きく、情報が見えづらい場面もあるため、「どの工務店に頼むか」を慎重に見極める姿勢が求められます。

「自分たちにぴったりの家を、一緒に考えてくれる相手に出会いたい」そう思う方にとって、工務店はとても有力な選択肢です。焦らず、丁寧に、相手を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。