家づくりを考えるとき、多くの方がまず思い浮かべるのはハウスメーカーや地元の工務店ではないでしょうか。でも、ちょっと違ったアプローチとして「建築家に依頼する」という道があります。仕事柄、建築家と関わる機会も多いので、その魅力や注意点について個人的な視点も交えてお話したいと思います。
そもそも「建築家」とは?
建築家とは、建築の設計を専門に行うプロのことをいいます。施主の要望をもとに図面を描き、建物のコンセプトや空間の在り方を一から考えていきます。大手ハウスメーカーのようなパッケージ化された住宅とは違い、完全オーダーメイドの設計で建てられることが最大の魅力です。
私自身も施主の「こう暮らしたい」という思いを建築家が形にしていく過程を何度も見聞きし、完成した建物に身を置くと、まさに“建築家住宅は住まい手の生き方を写す鏡のよう”と感じます。また、住宅を手掛ける建築家の事務所の多くは小規模なので、設計事務所という「組織」に依頼するというよりも、「人」に依頼する意味合いが強くなることもポイントです。
建築家の「監理業務」って?
建築家は図面を描くだけでは終わりません。「監理業務」という大切な役割があります。これは、実際の工事が図面通りに行われているか、材料や施工方法が適切かどうかなどを工事中にチェックする仕事です。
この監理業務の質が家の出来を左右すると言っても過言ではありません。とはいえ、現場で「これは違うよ」と指摘できるかどうかは、建築家の経験や姿勢によるところもあります。この視点からも、建築家選びは「この人に現場を任せられるか?」という信頼感が重要になります。
工務店の“下請け”として仕事を受けている建築家もいる?
少しわかりずらいのが「工務店の設計事務所(建築家)」という存在。これは施主が工務店に依頼すると、その下請けとして建築家が設計業務を受けるという形態です。
この場合、設計の自由度が制限されることもありますし、監理も工務店主導で進むケースが多いです。表向きは「建築家が設計する」となっていても、実際には工務店の都合に合わせた間取りや設備、仕上げ材の選択肢に限定されることも。施主として「何をかなえたいか」「誰と契約しているか」をしっかり見極めることが大切です。
建築家(設計事務所)と工務店の2本の契約形態
建築家と家を建てる場合、基本的には“2本の契約”になります。ひとつは建築家と結ぶ「設計・監理業務契約」、もうひとつは工務店との「工事請負契約」です。
ここで大事なのは、建築家が施主の代理人として、工務店との間に入ってくれるという点。つまり、専門知識をもった第三者が自分の立場に立って見積金額や工事のチェックをしてくれるので施主にとってはすごく心強いですよね。
もちろん、ハウスメーカーなどの一気通貫体制と比較すると契約ややりとりが複雑になる面もありますが、それを上回る安心感があります。ご自身で信頼できる人を選び、こだわりたい方にはこの建築家と工務店の2本契約形態の仕組みをむしろポジティブに感じるのではないでしょうか。
建築家との家づくりは、自由度と同時に判断の難しさも伴います。自分の想いを真摯にくみとってくれるパートナーと出会えたとき、そのプロセスは何にも代えがたい体験になります。そんな家づくりを目指したい方には、ぜひ一度「建築家」という選択肢も、検討してみてほしいと思います。