「この土地、本当に家が建つんでしょうか?」
そう不安そうに尋ねてこられたのは、変形地を相続されたT様ご夫婦。40代前半、小学生の娘さんと保育園に通う息子さんの4人家族です。実家の近くで手に入った土地は、いわゆる“旗竿地”で、しかもメインの敷地部分が三角形という難しい形状。周囲は住宅に囲まれ、車の出入りも難しい立地でした。
変形狭小地で建てるヒント3つ!
・変形地に家を建てるときの設計ポイント
・狭小地・旗竿地での間取りの工夫や発想法
・T様が土地を活かして理想の住まいを実現した方法
変形地=ダメな土地?そうとは限りません
T様が相続された土地は、道路から細い通路(幅2.5m)を通った先にある旗竿地で、敷地全体は約36坪。接道義務も満たしており法的には建築可能ですが、いざ計画を進めようとすると課題が山積していました。
・今の車では出入りが難しく、駐車スペースも本当に確保できるのか
・建ぺい率・容積率の制限に対し、有効活用できる面積が限られる
・三角形部分の使い道に悩む
T様も一時は「土地を売って建てやすい整形地に買い替えた方がいいのでは?」と検討されましたが、ご実家に近く、子育て環境としては理想的な立地を手放すことに抵抗がありました。
依頼先によっては“変形地”が得意分野になる
T様がここに建てようと方向性を変えるきっかけとなったのは、変形地に強い設計力を持つ工務店との出会いでした。
この工務店は、過去にも旗竿地や狭小変形地で多くの実績があり、「狭い」「歪(いびつ)」を逆手に取ったプランニングを得意としていました。
打ち合わせを重ねる中で、以下のような目からうろこの提案が次々と具体化されていきました。
・駐車スペースは竿部分を最大限利用し、回転不要なコンパクトカーを前提に設計
・三角形部分に“抜け”を作り、変形のデッドスペースを中庭として活用
・吹き抜けと高窓で光を取り入れ、圧迫感を軽減
・リビングは土地形状に沿った斜めラインを取り入れ、空間の個性に変換
T様が実現した家は「変形を活かす」中庭プラン
T様の家は土地の三角形部分を“欠点”と見るのではなく、むしろ“特徴”として活かした中庭プラン。キッチン・リビング・子ども部屋の3方向から中庭を囲むような形にし、家族の気配を感じながら過ごせる配置に。外部からの視線を遮りつつ、採光や風通しを確保できる空間になりました。
旗竿部分の通路は駐車スペースとして確保。コンパクトカーに乗り換える必要は生じたものの、車を手放すこともなく、雨の日でも子どもが濡れずに家に入れるよう、玄関ポーチまでの動線にも配慮した間取りが実現。
床面積のボリュームとしては当初想定より小さくなりましたが、その分、光や風の入り方、生活動線を徹底的に工夫した住まいが完成しました。将来的な増築や間取り変更の柔軟性は難しいことも理解した上で決定しましたが、これから数十年暮らす快適性をとることにしました。
マッチングコーディネータの視点!
変形地は、設計力の差が“そのまま暮らしやすさの差”に直結する土地です。もし今、
・プランを出してもらってもピンとこない
・この土地は「無理です」「やめた方がいい」とすぐ言われた
・デッドスペースばかりで使いにくそうな図面しか出てこない
そうしたお悩みがある方もあきらめる必要は全くありません。
一般的な整形地中心の工務店では発想が出にくい間取りも、狭小住宅の経験豊富な工務店なら、驚くような提案が出てくることもあります。「売るしかない」とあきらめる前にまずはご家族での絶対に叶えたい要望をリスト化してみましょう。