2024年1月1日に発生した能登半島地震は、最大震度7という激しい揺れを伴い、多くの建物に深刻な被害をもたらしました。震災から時間が経過し、国土交通省などによる詳細な調査結果が明らかになるにつれ、これからの家づくりにおいて私たちが教訓とすべき「事実」が見えてきています。
国土交通省が令和6年能登半島地震における建築物の構造被害の原因分析を行い、対策の方向性を示した最終とりまとめを2025年12月23日公表しましたので、最新の調査データに基づき、住宅の「耐震等級」が実際にどのような役割を果たしたのか、そしてお客様が家を建てる際にどのように判断すべきかを整理します。
最新基準でも「無被害」とは限らない現実
国土交通省の調査(※1)によると、今回の地震において2000年以降に建設された比較的新しい木造住宅608棟のうち、約65.5%にあたる398棟が無被害でした。
しかし一方で、4棟が倒壊、8棟が大破するという被害も確認されています。これは、現在の建築基準法を守って建てられた「最新の家」であっても、地震の揺れの性質や地盤の状況によっては、必ずしも無傷ではいられないという現実を示しています。
「耐震等級2以上」が示した明確な差
その一方で、非常に注目すべきデータがあります。同じ2000年基準の住宅の中でも、「耐震等級2以上」を確保している住宅、あるいは「長期優良住宅認定」を取得していた住宅については、調査対象のなかで9割以上が無被害でした。さらに重要なのは、これらの住宅において「倒壊」および「大破」の報告は1棟もなかったという点です。
この事実は、住宅性能評価制度による第三者の客観的な評価や、長期優良住宅としての基準をクリアすることが、災害時の被害軽減に極めて有効であることを裏付けています。
耐震等級の「数字」が持つ本当の意味
注文住宅を検討する際によく耳にする「耐震等級」ですが、改めてその定義を正しく理解しておくことが重要です。耐震等級は、住宅の構造の強さを「科学的な物差し」で測る指標です。
・等級1:建築基準法相当
数百年に一度発生する地震(震度6強〜7程度)に対し、倒壊・崩壊しない程度の強さです。
命を守ることを主眼としており、地震後の損傷(住み続けられるか)については許容される設計です。
・等級2:等級1の1.25倍の強度
避難所となる学校や病院などの公共施設と同程度の強度です。
今回の能登半島地震でも、この「1.25倍」の差が被害の有無を分ける大きな境界線となりました。
・等級3:等級1の1.5倍の強度
消防署や警察署など、災害復旧の拠点となる建物と同等のレベルです。
最も高い耐震性能であり、繰り返しの揺れに対しても高い耐性を発揮します。
耐震等級は単なる宣伝文句ではなく、構造計算に基づき、第三者機関が評価を下す厳格な制度です。この「物差し」をどう活用するかが、家づくりの鍵となります。
コストとリスクをどう天秤にかけるか
耐震等級を引き上げるためには、構造材の量を増やしたり、高性能な金物を使用したりする必要があります。そのためのコスト増は、一般的に数十万円から100万円程度とされています。
これを「追加の費用」と捉えるか、「将来のリスクへの投資」と捉えるかは、お客様によって判断が分かれるところでしょう。しかし、万が一の際の修繕費用や、地震保険の割引率(等級3であれば50%割引)、さらには税制面での優遇措置などを総合的に判断すれば、十分に価値のある選択肢と言えるはずです。
選択が支える未来
能登半島地震の教訓は、私たちに「目に見えない構造性能」が持つ価値を再認識させました。2000年基準であっても被害が出た住宅がある一方で、等級2以上の住宅が耐え抜いたという事実は、これからの注文住宅において、一つの重要な判断基準となるでしょう。住宅性能を公的に証明する「耐震等級」や「長期優良住宅認定」は、将来の不確実なリスクに対する一つの客観的なバッファ(ゆとり)となります。
家を建てるという行為は、数十年先の未来を設計することに他なりません。どのような数値を自らの住まいに与えるか。その選択が、数年後、あるいは数十年後の日常を支える土台となることは間違いありません。
(※1)出典:国土交通省「令和6年能登半島地震における建築物被害調査報告」
