じゃんさんへ
- 2003-06-18
- 名前:ザ・ハウス
じゃんさん、こんにちは。
いつも書き込みありがとうございます。
>ザ・ハウスさんがそれについて危惧しているようですが、それは世の中の変化に対し建築家が企業努力で順応していけばいいことであって(できない人は淘汰されるでしょう)、我々建てる側が考えることではありません。
アトリエ系建築家は企業とはいえません。前述の通り、組織的な設計事務所であれば、建て主はその設計事務所に来たわけで、担当が誰になってもかまわないわけですが、アトリエ系の場合は少なくとも基本設計はすべて本人が対応するというのが原則ですので、宿命的に引き受けられる仕事数に限界があります。ザ・ハウスでも建築家も市場原理の内側にあり、競争原理が働く対象という前提に立っていますが、仕事量の増加に見合って組織を大きくすればよい、ということが不可能であり(だから企業とはいえません)、時間がないという問題ばかりは当の建築家にもどうしようもありません。
また、忙しくて新しい建て主と話す時間がない建築家は、仕事がいっぱいだから会えないのであって、淘汰される方向にありません。
つまり、是非依頼したいのに忙しい建築家に会えずにお困りになるのは、建築家ではなく建て主側なのです。
>逆にマッチングの企業が増えることで、個人と建築家との出会いに支障をきたしたりしないでしょうか。
本当にそうであれば、ザ・ハウスは会社をたたみます。なぜならば、ザ・ハウスを設立する際に、建築家や建て主の方々にお会いして気づいたことは、「建築家との家づくりのトラブルは、ほとんどがコミュニケーションギャップから起こる」ということです。
建築家が土地探しやローン付けまでしてくれると思っている建て主。はっきり否定しなければ、肯定されたと思ってどんどん図面を進める建築家、などなど。
どちらが悪いということではなく、建て主、建築家双方が加害者であり被害者であるという現実があり、その最大の理由は双方の家づくりや建築家の職能に対する認識のズレを同じところまですり合わせてくれる場所がないということです。
そういう役割をする存在があれば、もっと建築家が設計する良質な住宅を本当に必要な方たちに提供できるだろうと考えました。それがザ・ハウスの設立の趣旨です。
>>ザ・ハウスの登録建築家に直接連絡したけれど会ってもらえず、ザ・ハウスを通じてご面談をセッティングしたケースがありましたが、
>という話、なにかおかしくないですか?なぜその建築家さんは断ったはずのクライアントとザ・ハウスさんを通じてだと時間を割くのでしょう?
前述の通り、そのほうが建築家にとって時間を有効に使えるからです。
正確に言えば、ザ・ハウスからの紹介ということで、「冷やかしではなく本当に自分に依頼したい方なのだぁ」と実感したからです。ただし、効率的に立ち回って、住宅設計で大もうけしようと思っている建築家はほとんどいません。(正直申し上げて住宅設計は儲かりませんし、ザ・ハウスへの手数料は建て主負担ではなく、建築家の負担です)むしろ住宅が好きでしょうがないとか、一般の方に喜んでいただきたいという志の高いかたばかりで、そういう方だからこそ、自分の限られた人生の時間を有効に使いたいと思っていらっしゃり、これは誰にも批判できない人間固有の権利です。
ザ・ハウスにいらっしゃるお客様の半分以上の方は、土地がなかったり、予算が足りなかったりでマッチングまで進まない方です。私どもは多くの時間を割いて、このような方たちのご計画の基本的な要件整備のお手伝いをさせていただいていることを大変誇りに思っています(もちろん無料です)。
しかし、もしこれらの方たちがご自分のご計画に不備があることがお気づきにならないまま、複数の建築家のところにいらっしゃっていたら、全体として多くの建築家の時間(もちろんその方々の時間も)がムダに費やされ、建築家から見れば本当に依頼したい方たちの依頼を受けられない、建て主側から見れば、要件も整っているし本当に依頼したいのに会ってももらえない、ということがより多く起こりうるのです。
じゃんさんが家づくりをされたのは少し前かと思いますが、この1年ほどで状況は変わっています。例えば、第一線でご活躍の方で契約前にプランを書く方は少なくなっています。これも決して「売れているから高飛車になっている」のではなく、本当に書く時間がないのです。(建築家はプランを書くこと自体を好きな方が多く、本音はむしろ書きたいと思っているようですが・・・)
ザ・ハウスでは建て主と建築家は、まったく対等なパートナー関係でなければならないと思っています。よって、じゃんさんのご意見から一貫して感じ取れる、「必要以上に建築家に遠慮したり持ち上げたりすべきではない。建築家が努力して建て主側に合わせるべきだ。」というお考えには第一義として賛成です。しかし、建築家側にもどうしても努力のしようがないところがあることも事実ですし、建て主側に建築家の好き嫌いがあるのと同様、建築家にもやりやすい建て主、やりにくい建て主があることは事実です。
結局、ザ・ハウスが両者のバッファの役割を果たせばこれらの問題が少しでも解決し、建て主、建築家双方に大きなメリットがあると信じているから、この仕事をしていますし、自信を持ってDanishさんにもお勧めしています。
>更にはいつも同じ傾向のクライアントを振り分けることにより、登録建築家の今までと違う可能性を摘んでしまうことにもならないか...
例えば、ローコストの実績のない建築家が、「自分はローコストもできるのでお施主様を紹介してください」とおっしゃることがありますが、ザ・ハウスでは同タイプの住宅を設計したことのない方を、お客様にお勧めすることはありません。じゃんさんのおっしゃるとおり、確かに建築家の可能性を縮めることになりますが、紹介業を営む者として、建築家の可能性を広げるためという理由で、一生に何度もない大切な家づくりをしようとされているお客様にリスクを負わせるようなことはできません。建築家の方には他で可能性を広げていただく以外にありませんし、それがザ・ハウスの割り切りと登録建築家の方にはご理解いただいています。
ただし、ザ・ハウスが「クライアントを割り振る」わけではなく、最終的にどの建築家に会うかをお決めになるのはお客様ですので、そのリスクを背負ってもどうしても依頼したいという覚悟をお持ちの方にはご紹介しています。
最後ですが、じゃんさんのようにどんどん直接建築家のところにいらっしゃって、お決めになるということは一切否定しませんし、このBBSでもそのような論調で書いたことはありません。
それが本当にいい結果を生み出すのであれば、それに越したことはないからです。しかし、いい結果を生み出すためには、建て主側のそれなりのご努力と時間が必要であり、どなたでもできる前提としては考えづらいことをご理解ください。