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建て主を無視した家

この記事は、実際に起こったトラブル事例を再構成したものです。

◆ケース

65才の女性がある大手ハウスメーカーに新築を依頼しました。

その女性は身長が137.5cmと小柄なため、「小柄な高齢者に配慮した住宅を作って欲しい」と要望を出しましたが、そのハウスメーカーは標準品を使い、通常通りの家を建てました。

その結果、洗面所の鏡が見えない、収納に手が届かない、キッチンが高過ぎて使えないなどの不具合が生じ、29ヶ所の瑕疵があるとして、損害賠償の裁判を起しました。

裁判では女性の主張がほぼ認められ、ハウスメーカーは床を上げるなどの手直しをした上で、損害賠償にも応じました。

◆解説

このケースは建築業界では有名なケースであり、その後の建て主に対するスタンスにも少なからず影響を与えました。

おそらく、実際の契約書の文言や建て主が承諾した設計内容には女性の身長を配慮した内容はなく、ハウスメーカーとしては契約書通り、つまり理論的には責任を問われる状況ではなかったものと推測されます。

しかし、実感としてハウスメーカーに非があることは誰が見ても明らかであり、どんな理由があっても建て主本位でなくてはならない家づくりのあり方を裁判所が端的に示した好例といえます。

現在は、消費者契約法によって、契約内容にかかわらず消費側が保護される環境が整ってきましたが、それでも契約書はよく読み込み、自分で契約書の内容を理解するのが難しい場合は、親戚や友人に確認してもらうなど、建て主自身が当事者意識をしっかりと持って、自分自身を守る姿勢が大切です。