国土交通省の発表によると、2025年度の「設計住宅性能評価書」の交付割合は40.7%となり、10年連続で増加し、過去最高を更新しました。住宅性能表示制度は2000年にスタートした制度で、住宅の性能を共通の基準で評価し、消費者が客観的に比較できるようにすることを目的としています。
この数字を見て、「住宅性能を重視する人が増えている」と感じた方も多いと思います。
もちろん、それも事実でしょう。
ただ私は、この数字を見て別のことを考えていました。
それは、
家の価値を、未来の誰かに伝える準備ができている家はどれくらいあるのだろうか。
ということです。
家づくりには多くの「証明」がある
家づくりには、実はたくさんの審査や検査があります。
設計段階では建築確認申請があります。建築基準法に適合しているかを確認するもので、家を建てるためには欠かせない手続きです。完成すると完了検査を受け、適合していれば検査済証が交付されます。
また、希望すれば設計住宅性能評価を受けることもできます。これは建築基準法の最低基準を確認するものではなく、耐震性や省エネ性、劣化対策などの性能を第三者が評価する制度です。図面をもとに審査が行われます。
さらに長期優良住宅認定という制度もあります。こちらは長く良好な状態で使い続けられる住宅かどうかを認定する制度です。住宅性能評価とはよく一緒に語られますが、実は別の制度です。
工事が始まれば、多くの住宅で瑕疵保険のための現場検査も行われます。基礎や構造など、完成後には見えなくなる部分を確認するためです。
こうして見ると、家づくりはたくさんのチェックを受けながら進んでいます。
では、その検査や認定の本当の価値はどこにあるのでしょうか。
それは単に「安心のため」だけではないと思います。
性能だけでなく、記録が残る
これらの制度は、もちろん住宅の安全性や性能を確保するためにあります。
しかし私は、もうひとつ大切な役割があると思っています。
それは、「記録を残すこと」です。
住宅性能評価書も、長期優良住宅の認定も、検査済証も、その時だけのための書類ではありません。
・どんな性能を持つ住宅だったのか。
・どのような基準に適合していたのか。
・どのような手続きを経て建てられたのか。
そうした情報を未来へ残す役割、これらの書類は「家の履歴書」になります。
住宅の価値は、時間が経ってから問われる
家を建てた直後は、その価値を説明するのは簡単です。
・どんな会社が建てたのか。
・どんな考え方で計画したのか。
・耐震性能や断熱性能はどうなのか。
建てた本人もよく分かっています。ところが10年後、20年後になると状況は変わります。
・担当者は異動しているかもしれません。
・工事に関わった人も変わっているでしょう。
家を建てた時の記憶も少しずつ薄れていきます。それでも家は残ります。
そして、その家を見た人はこう考えます。「この家はどんな家なのだろう」そのとき頼りになるのは、人の記憶ではありません。
客観的な記録です。
住み継ぐ時代だからこそ
私は、中古住宅市場がもっと評価される社会になってほしいと思っています。
良い家は、新築の時だけ価値があるわけではありません。
きちんと設計され、
きちんと施工され、
きちんと維持管理されてきた家には、
年月を経ても価値があります。
しかし、その価値を次の人に伝える材料がなければ、正当に評価されにくいのも事実です。
住宅性能評価書や長期優良住宅認定は、そのための共通言語になり得ます。
「この家は、こんな考え方で建てられた家です」
と未来の誰かに伝えるための手掛かりになるのです。
40.7%をどう見るか
今回発表された40.7%という数字は、過去最高です。一方で見れば、まだ半数には届いていません。
私はこの数字に、住宅性能への関心の高まりを見ると同時に、「家の履歴を残す文化は、まだ発展途上なのかもしれない」とも感じました。
家づくりというと、どうしても間取りや設備、デザインに目が向きます。もちろん、それらは大切です。
けれども家は完成した瞬間がゴールではありません。その先の20年、30年、あるいは50年という時間の中で、住み継がれ、評価されていくものです。
だからこそ私は、今回のニュースを単なる制度利用率の話としてではなく、「家の価値を未来へどう伝えるか」という問いとして受け取りました。
あなたの家には、未来の誰かに手渡せる履歴書がありますか。

