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法規制内で最大採光を叶えたい
都市部の住宅では、斜線制限や天空率といった法規制が採光計画に大きく影響します。今回ご紹介するのは、密集地に土地を購入されたK様ご夫婦(30代・幼児2人)の事例です。
南側に隣家が迫り、通常の窓配置では十分な光が入らない状況でした。土地購入の段階から「どう採光を確保するか」が大きなテーマとなり、建築計画の最初期から検討が必要でした。
後悔しないために知っておきたい3つのこと
1.斜線制限・天空率と採光計画の関係
2.吹抜なしでも光を取り込む高窓の活用法
3.ライトコートや反射材で補う工夫
密集地ならではの採光計画のジレンマ
K様(30代ご夫婦・幼児2人)は、都市部の利便性を重視して土地を購入。しかし南側に隣家が接近しており、通常の掃き出し窓では十分な採光が得られませんでした。吹抜を設ければ光は入りますが、居住スペースが減り、冷暖房効率も悪化します。
「とにかく明るい家にしたい」という思いから、当初はライトコートを検討しましたが、敷地面積の制約で居室が狭くなる懸念がありました。さらに、天空率を満たすために屋根形状を工夫すると、コストやデザイン面での制約も生じます。
そこで「採光量だけでなく、日常の暮らしやすさをどう確保するか」が重要なテーマになりました。
屋根形状工夫か、窓計画と内装反射率で補うか、検討した選択肢は2つ
A:屋根形状を工夫して天空率を確保
・メリット:法規制をクリアしつつ、上部から光を取り込める。
・デメリット:屋根形状が複雑になり、施工コストが上がる。外観デザインの自由度も制約される。
B:窓計画+内装反射率で補う
・メリット:居住スペースを確保しつつ、反射材や高窓で光を拡散できる。
・デメリット:直射光は得にくく、計画次第で効果に差が出る。
K様は当初屋根形状の工夫に憧れがありましたが、「コストとデザインの制約が大きい」と判断し、窓計画と反射材活用を選択されました。
マッチングコーディネータの視点!
これまでの相談で多いのは「光を確保したい」という漠然とした要望だけを伝え、結果的に期待した明るさが得られなかったという後悔です。採光計画を工務店に依頼する際は、以下の3点を整理して伝えることが大切です。
・どの時間帯に、どの部屋で光を重視したいか(朝のリビング、昼の書斎など)
・吹抜やライトコートを避けたい理由(居住スペース確保、冷暖房効率など)
・内装材や窓位置に関する希望(反射率の高い壁材、視線を避ける高窓など)
これらを明確に伝えることで、工務店からの提案精度が格段に上がり、施主の暮らし方に合った採光計画が実現しやすくなります。
K様が選んだのは「高窓+反射材活用」
最終的にK様は、リビングに高窓を設け、壁材や天井に反射率の高い素材を採用しました。これにより、直射光が難しい環境でも室内全体に柔らかい光が広がる計画となりました。
さらに、ライトコートを設けずに済んだことで居住スペースを確保し、冷暖房効率も維持できました。
“採光量”だけでなく“暮らし方”を描くことが大事
都市部の採光計画は、単に光を取り込むだけでなく、どの部屋で・どんな時間帯に・どんな質の光を求めるのかを考えることが重要です。斜線制限や天空率といった法規制を前提に、屋根形状・窓計画・内装材の選択を組み合わせることで、毎日の暮らしの快適さと満足度が大きく変わります。



