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今、「ウッドショック」が住宅業界で大きなニュースになっています。
4月22日の日本経済新聞
住宅の木材流通価格が上昇し、住宅の梁に使われるラミナ材という集成材の単価がリーマン・ショック以来の高値となったこと、また製材メーカーが米松製材品を値上げしたことが報じられています。
※参考リンク/日本経済新聞
ウッドショックの影響
今回のウッドショックはアメリカ・中国の活況な住宅需要、世界的なコンテナ不足、日本の国際的な経済競争力低下などといった複合的な要因が絡んでいます。
住宅価格の上昇、木材の流通が滞ることによって
・工事金額の見直しの要請
・完成時期の遅延
・資金繰りに窮する工務店の増加
などが懸念されています。
供給者側もウッドショックの影響を最小限に留めるべく業界をあげて対策を検討しているところですが、住宅を建築中の方やこれから住宅を建てる方は、ここ数か月間の動きを注視しておかれた方がよいでしょう。
30年前に起きたウッドショック
ところで過去に目を向けてみると、我々は今から約30年前にもウッドショックといわれる事態を経験しています。
1992年から1993年に掛けて起きたウッドショックは、アメリカやマレーシアの天然林の過剰伐採を抑制する一連の動きに端を発したものでした。しかしながら丸太の供給不足が恒常的になるとみられていた当時の予想に反して、危機的な期間は長期化しませんでした。
これは代替品の開発や技術革新によって需給バランスの不均衡が解消されたことがひとつの要因であると考えられています。例えば、今ではなじみのあるOSB、MDF、LVLなどの木質ボードはこの当時に開発されたものです。
今回は30年前のウッドショックとは状況が大きく異なるものの、技術革新がもたらす影響は小さくないでしょう。
期待される「国産材」の利用
特にわが国で期待を寄せられているのが国産材の利用です。
しかし今すぐに輸入材を国産材に代替できるわけではありません。道路や鉄道、電気やガスのインフラをゴロっと変えるような多大な労力を要することです。
ここでは国産材の利用にチャレンジする3つの取り組みをご紹介します。
「ウッドステーション」の取り組み
山元から製材所、プレカット工場をつなぎ、国産材を活用するサプライチェーンの構築が進んでいます。多くの地域工務店が利用できるオープンプラットフォームに期待が集まっています。
※参考リンク/ウッドステーション「住宅産業を再び持続可能な成長産業へ」
「TOKYO WOOD普及協会」の取り組み
東京多摩地域の林業家、製材所、プレカット工場、工務店や建築士が協力し、地産地消の木造住宅を普及する取り組みです。
※参考リンク/一般社団法人TOKYO WOOD普及協会「東京の家と森を育てる」
こうした動きは注文住宅だけでなく、建売事業者でも始まっています。
「日本木造分譲住宅協会」の取り組み
建売事業者大手のオープンハウス、三栄建築設計、ケイアイスター不動産の3社は、安定的な木造分譲住宅の供給を目指して「一般社団法人日本木造分譲住宅協会」を設立しました。
※参考リンク/「国産木材活用の業界団体設立(日本経済新聞/4月13日)」
今回のウッドショックによって住宅業界が負う傷は小さくないでしょう。しかしポジティブな部分に目を向けると、ウッドショックは住宅産業が新しい産業構造への転換を後押しする出来事になるかもしれません。