工務店のメリットとデメリットをお話しすることは大変難しいことです。
なぜなら、一口に工務店といっても様々な形態があり(→参考記事:「工務店って何?」)、またそれぞれの規模や経営意識の違いによっても、「これが同じ工務店か」と思うほど各社の違いが大きいからです。
※参考→ハウスメーカーのメリット・デメリット
※参考→設計事務所のメリット・デメリット
しかし、そう言っていても仕方ありませんので、誤解を恐れずに最大公約数としての一般論を各項目に分けて説明します。
(1)コスト
住宅を依頼する工務店は、管理コストの安い小規模な会社が多いためにほぼ原価に近い金額で建てることができ、またハウスメーカーのような仕様制限がないため、都市部の狭く複雑な形の土地でも安く建てることができます。
計画期間も、建築家で建てる家ほどはかかりませんので、仮住まい費用などの諸費用も抑えることができます。
工務店で建てる家の一番のメリットは、コストパフォーマンスの良さということができるでしょう。
ただし、土地も購入する場合は、各工務店の設計力によっては土地の欠点をカバーし切れないためにある程度好条件の土地を用意せねばならないことがあり、その場合は、土地も含めた総額では建物のコストメリットが相殺されることもあります。
(2)設計の自由度とデザイン
設計の自由度はハウスメーカーと違って、法令・予算以外の制約は一切ありません。つまり、本来は建築家で建てる家と同様の設計自由度があるわけですが、実際はそうとは言い切れません。
工務店の主業務はあくまでも設計ではなく施工であり、また工務店は保守的な傾向がありますので、使い慣れた素材や施工の効率、自社が安く仕入れられる素材にこだわる傾向があり、結果として設計が大幅に制約されることもあります。
また、フランチャイズに加入していたり、特定工法・設備を前面に押し出している工務店は、ハウスメーカーと同様に仕様のレベルで設計の制約を受けます。
デザインに関しては、好き嫌いを除いても、それこそピンからキリまでといえます。全くデザインに気を配らない工務店から、建築家顔負けのデザイン力を持った工務店まであります。
しかし、例外をさておくと、理論的にはデザインを専業とする建築家よりはデザイン力は劣ると考えてよいでしょう。
(3)品質
ここでは、「欠陥住宅になりにくい」「手抜き工事を防ぎやすい」という視点で品質を考えて見ます。
欠陥住宅を防ぐためには、「監理」という役割が重要になってきますが、工務店で建てる家の場合、監理をする方とされる方、つまりチェックする方とされる方が同じ会社であるため、チェック機能は働きません。
建築士のいない小さい工務店では知り合いの建築士に名前だけを借りる「代願」という習慣が一般化しており、監理者が現場に一度も来ないことさえ少なくありません。
しかし、だからといって工務店の家が欠陥住宅になりやすいという結論は早計です。
そもそも日本では監理という概念が生まれるはるか昔から、工務店の前身である大工の棟梁が責任施工を行ってきましたので、第三者にチェックされなくとも「職人のプライドにかけて手抜きはしない!」というような心意気やそれを裏付ける技術をもった工務店も少なくありません。
また、もともと地域密着型の産業である工務店は、地元での評判を落とすような行為を簡単にできるものではありませんし、実際に工務店の経営者は、人のいい素朴な方がほとんどです。
問題は、チェック機能が働かない以上、一部の悪質な業者への歯止めがなく、建て主は「信じられるか否か」という心証のみを頼りに判断をせざるを得ないことであり、その事そのものが工務店の家のデメリットといえます。
業界側の自主的な自浄努力が待たれるところです。
(4)保証
施工者は、品確法によって竣工後10年間の瑕疵保証や、住宅瑕疵担保履行法によって資力確保措置(瑕疵保険への加入または保証金の供託)が義務付けられており、それはどの依頼先でも変わりありません。
また、20年・30年・60年保証など、会社によって独自の保証をつけている場合もあります。
(5)ローンの組みやすさ
工務店と銀行は、昔から協働関係にあり、流れ作業的にスムーズにローンを組むことが可能です。また、ある程度の規模の工務店は、ローンを組む作業さえ代行してくれます。
ただし、最近では話を持ち込んだ工務店よりも、借りる本人の信用の方がはるかに重視されますので、最終的に借りられるかどうかはあくまでも建て主本人の信用次第ということになります。
・潜在的な設計の自由度は高いものの、現実的には多かれ少なかれ施工に制約を受ける。
・監理を自社内で行うので工事のチェック機能は働かず、信じられるか否かが大切。