「建築家」とは
「建築家」とは、一般的に建物の設計を行う人のことを指しますが、実はこれは正式な資格名ではなく、法律上の定義も存在しません。つまり、極端に言えば名乗りさえすれば誰でも「建築家」と称することができます。
一方で、建築物を実際に建てるためには、建築確認申請という手続きが必要であり、これには「建築士」という国家資格が不可欠です。そのため、実務として設計を担う建築家の多くは、一級または二級建築士の資格を持っています。ただし、過去には建築士の資格を持たず、別の有資格者の名義を借りて活動していた著名な建築家も存在しており、資格の有無が「建築家」としての活動を一義的に定義するわけではないのが実情です。
私自身、仕事柄多くの建築家と住宅づくりに携わる中で感じているのは、建築家とは単なる図面作成者ではなく、「暮らしを空間として翻訳する」存在だということです。施主の価値観や生活スタイルに寄り添い、それを空間に落とし込む。そのプロセスには、高度な技術だけでなく、繊細な感受性と提案力が求められます。
では、「建築家と建てる家」は、一般的な住宅と何が違うのでしょうか? 次に、その特徴を3つの視点からご紹介します。
建築家の大きな特徴とは
・暮らしが変わるデザイン提案
建築家がまず重視するのは空間デザインです。それは単に美しい見た目にとどまらず、住む人の行動や感覚にフィットした心地よさまでを含みます。
光の入り方、動線、素材感、空間の余白。そうした要素の一つひとつに意図があり、日常を少し豊かにしてくれる「仕掛け」が込められています。
デザインを、単なる装飾ではなく「暮らし方の提案」として扱っている点が、建築家の本質的なスタンスだといえるでしょう。
・施工から独立している
建築家は工務店などの施工者とは独立して仕事をしています。そのため、設計の自由度が高く、施工会社の都合に左右されずに、施主の希望に真正面から向き合えるのが特長です。
また、工事が設計通りに進んでいるかどうかを現場で確認し、施主側に立ったチェック機能も担います。この中立性こそが、建築家が信頼される理由のひとつです。
施主と施工者の間に立つ“第三者”というより、“施主側の伴走者”という表現の方が近いかもしれません。
・住宅設計に精通した建築家がいる
建築家といっても、その専門分野は多岐にわたります。商業施設や公共建築に携わる人もいれば、住宅を専門にしている建築家もいます。
住宅という分野には、施主とのコミュニケーション力、家族構成やライフスタイルの理解、限られた予算と敷地条件の中で最大限の提案を行う柔軟性などが必要です。
住宅専門の建築家は、それらの複雑な要素を整理しながら、施主にとって唯一無二の住まいをかたちにしていきます。建築そのものに加え、「暮らしに寄り添う力」が問われる分野といえるでしょう。