※この記事は、実際にザ・ハウスに寄せられたご相談を再構成したものです。
◆ケース
分離発注を行なっている設計者に依頼しました。
分離発注なので、工務店を介さず、各工事の専門業者と直接契約を取り交わし、各専門業者へ直接工事費の支払いを行うことになっていたのですが、支払いの窓口が十数社になってしまい、煩雑になるため、設計者を窓口として、設計者から各専門業者に分配して費用を支払ってもらうことにしました。
すでに工事が済んでいる出来高分は設計者に支払っているのですが、どうやら設計者から各専門業者への支払いはされていないらしいのです。それを設計者に問い詰めると、なんと設計者は自己破産の申請をしたとのこと。私がすでに支払った費用や現在建築中の建物は、これからどうなるのでしょうか?
◆解説
「分離発注」は、工務店を介さず、施主が直接各工事の専門業者ごとに契約を結ぶ方法です。実務的には設計士が分離発注の取りまとめを行うため、工務店の経費を削減できると言われています。
しかし残念ながら、頻発するトラブルがコストや工期に跳ね返り、結局は工務店に頼んでおいたほうが安かった、というケースも少なくありません。
分離発注を行うにあたっては、建て主がどんな手間や勉強もいとわない姿勢とそのための時間を作れること、強い当事者意識とそれに伴う自己責任の原則をしっかりと理解することが前提になります。
また、設計士を工務店の代わりに捉え、設計士が工務店の役割に取って代わるだけなら、何のメリットもないばかりか、リスクだけが高まることになります。
本来、工務店の現場監督が担っている各専門業者の手配、工程管理、建築費の調整や費用の支払いなどの役割は、それだけで十分に専門技能と言え、分離発注をサポートする設計士には現場監督と同等以上の力量が求められます。
工事のマネジメントと設計はほとんど別の分野であり、常に工事のマネジメントをしている工務店の仕事を設計士が簡単にできるとは思えませんし、そのための運営環境も整っていません。分離発注における設計士は、あくまでも建て主のアドバイザーに過ぎません。
このケースの場合、その設計者は初めから資金を流用したかった可能性もあり、法的にしっかりとした対応が必要です。
しかし、ご相談者が分離発注に対する前述のような認識を持っていれば100%防げたことでもあり、大変悔やまれる結果です。