分離発注

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通常言われている分離発注には、2つの意味があります。

ひとつは、「設計監理と施工を分離して発注する」という意味です。
ハウスメーカーや多くの工務店の家づくりがそうであるように、一般的な住宅では、設計と施工が一括して発注することがほとんどです。
これに対し、設計監理は設計事務所、施工は工務店に別々に発注するケースがあり、これを指して分離発注という言葉があてられることがあります。建築家と住宅を建てる際は、まさにこのケースにあたります。

もうひとつの分離発注は、元請の工務店に工事を一括して任せるのではなく、その下に属する大工や左官、電気業者、水道業者などの「専門業者ごとに、建て主自身が直接工事を発注する」方法を指します。

ここでは、後者の分離発注について説明をいたします。

一般的に、分離発注は元請けの工務店を介さないことによって、工務店の経費が削減され、建築費のコストダウンが可能と言われています。

ただし、工務店の経費には、数十種にも及ぶ各専門業者を取りまとめ、それぞれの工事進捗と工事の質を管理する現場管理の費用、また完成後のメンテナンスや保証を行うコストも含まれています。

そのため、経費が削減できるのと同時に、本来、工務店が担っているこれらの役割も享受できなくなることを十分に理解しておかなければなりません。

メリットばかりが大きくクローズアップされがちな分離発注ですが、この発注方式を取る際にはデメリットもしっかりと理解する必要があります。

◆メリット

・各業者が施主に直接見積を提出するため、それぞれの金額を明確かつ詳細に把握でき、各工事に対して緻密にコストを検証することが可能。

・施主と業者が直に話をすることで、お互いに顔が見えやすく、意思の疎通がしやすい。

◆デメリット

・各専門業者のスケジュールの調整や手配などの工事管理は、通常は元請の工務店が行うが、分離発注の場合は、建て主自身が手順の把握や業者間の調整などを行なわなければならず、専門知識と手間を要する。

・住宅の保証は通常は元請の工務店が行うが、分離発注の場合は専門業者と直接の契約を行うため、瑕疵が生じた際はどの業者の仕事によって発生したものなのか、責任の切り分けが難しい。

・建築家に分離発注全般についての管理を依頼する場合は、その分の手間賃が設計監理料に含まれることが多いが、同じ手間賃を払うのであれば、工事管理の専門家である元請工務店ではなく、分野違いの建築家に依頼するという根拠はない。

・分離発注は融資が組みにくく、また各業者には着手時に支払う必要があるため、相当額の自己資金が必要になる。

上記のように、分離発注は工事の補償や工程管理、費用の支払いなど、施主の方がご自身で行われるのには非常に難しくリスクを伴う工事発注方法です。また、頻発するトラブルがコストや工期に跳ね返り、結局は工務店に頼んでおいたほうが安かった、というケースも少なくありません。

分離発注を行うためには、建て主がどんな手間もいとわない姿勢とそのための時間をつくれること、自己責任の原則をしっかりと理解することが必要となり、慎重な判断が必要です。

(佐々木)
まじめな家づくりセミナー