設計事務所の選び方

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工務店やハウスメーカーで家を建てる場合は、展示場の見学、プランや見積り等によって完成形とほぼ正確な費用を確認した上で契約をすることができますが、設計事務所の場合は大きく異なります。

展示場を持っている設計事務所は皆無といっていいでしょうし、誰もが契約前にプランを描くとは限りません。また、正確な工事費も設計完了後に工務店に見積りを依頼しないと知ることができません。つまり、建て主は完成形や正確な費用がいまひとつわからない状況で契約に臨まなければならないのです。

なぜならば、設計事務所の場合はそれぞれの家族のライフスタイルに合わせて一軒一軒の家をゼロから設計するために展示場は無意味ですし、プランをつくるためには建て主との継続的で腰を据えた付き合いが不可欠なので、あまり建て主を知らない状況で無理にプランを描いても当てずっぽうになってしまうからです。

それでは、設計事務所は何を基準に選べばいいのでしょうか?

それは、ズバリ建築家そのものの「人物」です。

ほとんどの方は建築家を探す場合、雑誌やホームページをご覧になってデザインの気に入った建築家にまずアプローチすることでしょう。しかし、デザインの好き嫌いだけで建築家を決めることは大変危険なことです。建築家を訪ねた際には人物を選ぶという前提の元に、以下のポイントをしっかりとご確認ください。

(1)コミュニケーション能力と相性

まず、建築家選びにおいて最も大切なことは、1年以上の計画期間を通して、その建築家と相互信頼を保っていけるかどうかということです。

建て主と建築家のトラブルのほとんどは、ミスコミュニケーションが原因と考えられます。はじめは小さな行き違いでも、それが時間と共に膨らんでいき、最後にはお互いに全てが疑心暗鬼になってしまう、ということは通常の人間関係でもありがちなことです。

じっくりと話し合い、自分たちの意見に耳を傾けてくれるか、細かいことでもこちらが理解できるまで説明してくれるか、もっとわかりやすくいえば家を建て終わったあとでも、ずっとつきあっていきたい人物かを確認してください。

(2)設計能力

ここでいう設計能力とは、間取りやデザインの提案力ではなく、細かい部分の仕上げ方や雨じまいなどの住宅の性能面に関する設計能力です。

施主側に専門知識が無いと判断がつきづらいところですが、一つの基準となるのは経験の多さです。

住宅設計は実に多くの要素が含まれていて、大学や建築士試験の勉強だけでは、とても学びきれるものではありません。ほとんどのことは小さい失敗を繰り返しながら、時間をかけて実地で学ばなければならないのです。

過去の作品写真や資料を見せてもらったり、できれば過去に依頼した建て主に直接話を聞いて確認できる機会が持てれば、より安心です。その際に注意をしなければならないのは、見せられた資料が図面や模型、CGだけの時は、実際には設計を請け負っていない可能性がありますので、必ず写真を見せてもらってください。

また、その建築家自身の責任で設計監理を行ったものではなく、かつて勤務していてた設計事務所の所員時代に一担当者として携わった建物や、工務店の下請けとして携わった建物の場合もありますので、確認が必要です。

(3)監理能力

設計能力と同じくらい大切な要素が監理能力です。

監理とは、建て主が承認した図面通りに工事が行われているかをチェックしたり、図面に表せない細かい部分の仕上げ方などを工務店に指示する仕事です。せっかくいい設計ができたとしても、マメで適切な監理ができないと、文字通り絵に描いた餅になってしまいます。

まず建築家にどのくらいの頻度で監理をするかを聞いてください。遠隔地でもない限り、平均して週に1度のペースで現場に足を運ぶ必要があります。

次に、施工を担当する工務店をどう選ぶかを聞いてください。建築家が自分が紹介する工務店にこだわる場合は、馴れ合いから監理が甘くなる可能性があります。ただし、初めて仕事をする工務店よりも、過去に自分の設計を手掛けたことがある工務店により安心感を感じるのは当然ですし、特定工務店との信頼関係によってコストを落とす建築家もいますので、建築家が特定の工務店にこだわる場合はその理由をきちんと確認しましょう。

(4)コストマネジメント能力

コストマネジメント能力とは、設計の段階でその家の工事費はいくらになるのかを見切る能力であり、また工務店からはじめの見積りが出たあとに、建て主の希望をなるべく適えた上で、予算内に収まるように設計を修正していく能力です。

これも、やはり経験の多さが一つの指標となります。(2)の設計能力と同様、過去の実作を見せてもらったり、できれば他の建て主から話を聞いて確認してください。

(5)デザイン能力

過去の作品集などを見せてもらい、お好みに合うかを確認してください。

その際に注意すべき点は、あまり細かい部分にこだわらないことです。1棟1棟はそれぞれの建て主の要望によってでき上がっていますので、例えば本棚の色などは参考になりません。複数の作品の中から共通して伝わってくるイメージや考え方などを大づかみで読み取ることが大切です。

(6)その他の注意点

建築家によって、建築家本人が最初から最後まで直接家づくりにかかわる場合と、重要な工程や全体の監修は本人でも、実際の業務は担当スタッフが行う場合があります。

建て主としては、少しでも多く本人に関わって欲しいところですが、本人が全ての業務を行う建築家は駆け出しの方か、逆にこだわりが強いベテランで設計料がより高額な方かのどちらかがほとんどです。

一方、担当スタッフが多くをこなす場合は設計料がリーズナブルな反面、スタッフの技量や建て主との相性、建築家本人とスタッフのコミュニケーションという要素が加わって連携が複雑になり、その分トラブルが起きる可能性が高まります。

それぞれ一長一短がありますので、どちらがいいということではなく、後で「こんなはずではなかった」というようなことがないように、建築家本人がどの程度計画にかかわるかを確認し、納得の上で計画を進めてください。

・建築家はプランでなく、人物で選ぶ。
・人物とは、いい家づくりのために必要な能力と人間としての相性を合わせた総合力。
・デザインの好き嫌いだけで選ぶことは避けるべき。
(関)

※関連サイト「ザ・ハウス@建築家」を開きます

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