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賃貸併用住宅

家を建てる選択肢の1つに、自宅の一部に賃貸部分を取り込む「賃貸併用住宅」があります。

資産運用に注目が集まっていることもあって、ハウスメーカー、建築会社、不動産会社等も積極的に提案を行っています。

しかしながら、単に住宅ローンの負担を軽減するためだけに、安易に併用住宅を計画することは危険です。

賃貸併用住宅は、金利の変動や不動産市況を取り巻く環境の変化によって、当初の計画が大きく変わってしまうリスクを伴います。

また、建物が建った当初は最新のニーズを捉えていても、放っておけば年を経る毎に古くなっていきます。さらに、周辺には次々と新しい「競合商品」が出てきますので、相対的にも競争力が低下していきます。

これはまさに事業であり、最終的にリスクを負うのはオーナー自身です。不動産賃貸業者、設計事務所、建築会社、税理士、ファイナンシャルプランナー等の専門家の助言を得ながら、将来的な不確定要素も想定して、主体的に計画を進めることが重要です。

なお、土地から取得して賃貸併用住宅を計画する場合には、高い家賃が見込める上に、賃貸ニーズが見込めるエリアでない限り、事業収支計画が成立するケースはまれと考えた方がいいでしょう。

計画のポイント

(1)賃貸併用住宅を建てる目的を考える

専用住宅ではなく、なぜ賃貸併用住宅を計画する必要があるのかを考えましょう。当初は住宅を建替えることが主たる目的だったにも関らず、いつの間にか必要以上の大規模な事業を検討している方が少なくありません。

目的が「賃貸部分はローンの負担を軽減するためのもので、あくまでも住みやすい家を建てること」なのか、事業としての「採算性」なのか、「節税効果」なのか、常にどこに軸足を置くのかに立ち戻って計画を進めていくことが重要です。

また、賃貸併用住宅の場合は、プライバシーの問題が少なからず生じます。アプローチを分離したり、メゾネットにするなど、賃貸部分との接点が少なく独立性を確保できる間取りにすることが重要です。

また、賃貸併用住宅の場合には、戸建住宅とは異なる建築上の制限も生じます。敷地内に空地を設けたり、2方向の避難経路を確保することが必要になり、場合によっては住宅部分の動線や配置に影響が及び、「住みやすい住宅を建てる」という本来の目的が損なわれてしまうことがあります。

(2)地域の需要を調べる

まず、その地域に賃貸のニーズがなければ事業そのものが成り立ちません。

「単身者の需要が見込めるのか」、「ファミリー層の需要が見込めるのか」等、その地域の特性を把握した上で間取りを計画することが重要です。

また、現在の賃貸物件の動向や入居率の悪い物件の傾向なども把握する必要があります。入居者は必ず相対評価をしながら物件を探しますので、存在している他の物件以上に、何らかの秀でた要素を備えている必要があります。

これらの特徴や傾向を知るには、その地域の入居者や物件を知っている地域の不動産賃貸業者からアドバイスを得るといいでしょう。

(3)綿密な事業計画を立てる

賃貸併用住宅の場合、戸建住宅の計画よりも建設費が増えるため、一般的に借入額は大きな額になります。戸建住宅を建てる場合よりも当然リスクは大きくなりますので、それだけ綿密な事業計画を立てておかなければなりません。

条件にもよりますが、賃貸併用住宅を建築すると相続税、固定資産税、所得税等の節税効果が期待できます。この場合は、さらに緻密な計算と経験が必要なため、税理士などの専門家を交えて計画を進めていく必要があります。

また、銀行から融資を受ける場合は、原則として、住宅部分の面積が総面積の半分以上なければ住宅ローンの利用ができません。住宅ローンと事業性の高いアパートローンとでは適用される金利等の条件が異なるので注意が必要です。

賃貸事業に携わった経験があるファイナンシャルプランナーや税理士と相談しながら、事業計画を立てるといいでしょう。

(4)建築計画のパートナーを探す

市場の動向を把握し、事業収支計画の目安を立てたら、次に「どの建築会社」と「どのような建物」を計画すべきかを検討する必要があります。

まず、「設計も施工も同じ建築会社に依頼をする」のか、それとも「設計事務所に設計監理」を依頼し、これとは別に「建築会社に施工」を依頼するのかを考えましょう。

「(1)~(3)で検討した主旨に最も適う依頼先がどこか」という視点で、建物の構造、間取り(プラン)の自由度、コスト、仕様のグレードなどをポイントに各社を評価するといいでしょう。

場合によっては、建築会社からの提案内容を見た上で、(1)~(3)の微修正を行います。
特に賃料については、(2)の段階で相談した不動産賃貸業者を含め、複数の不動産賃貸業者に賃料の査定を依頼するといいでしょう。

なお、建築計画とあわせて、ハウスメーカーや建築会社から市場調査や事業収支計画が提案されることがありますが、これは建築工事を受注するための「営業ツール」的な意味合いが強く、できるだけ少ない投資で、長期に渡って安定収入を確保したいと考えるオーナー側の視点とは必ずしも一致しないことを踏まえておきましょう。

(5)入居者募集のパートナーを探す

入居者を募る不動産賃貸業者を選定します。これまで相談した不動産賃貸業者に正式に募集の依頼を行います。
1社に募集を任せる方法と複数の会社に任せる方法がありますので、不動産業者から説明を受け、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で募集方法を決めましょう。

なお、募集時のことだけではなく、長期的な視点に立ち、更新時の手続きや管理のことも考えてパートナーを選びましょう。