トラブルのコントロール

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住宅産業は「クレーム産業」と言われるくらいトラブルの多い産業です。

工業化住宅であるハウスメーカーの住宅でも完全な工業製品ではなく、また一つ一つ違う環境の土地に建てるわけですから、多かれ少なかれ思った通りにはいかない部分が出てきます。

しかし、建て始めてからいつトラブルが起きるか目を皿のようにして緊張していたら、それだけで神経がまいってしまいます。

それよりもトラブルが起きることそのものは前提にした上で、なるべくトラブルが起きないような環境を整え、そしていざトラブルが起きたときに即、円滑に解決できる体制をつくることが大切です。

トラブルが深刻か否かの分かれ道は、建物に対するダメージの大きさではなく、関係者との利害関係が一致しているか否かです。例え建物に対するダメージが大きくとも、関係者全員が力を合わせて解決しようという雰囲気であれば必ず回復可能ですし、逆に小さな問題でも責任を擦り付け合うような状況では解決不可能なトラブルに発展していくのは時間の問題です。

一言で言えば、トラブルのコントロールとは、関係者の利益や雰囲気を、「いい家を建てよう」というひとつの目標から逸らさせない努力と言えます。

そのためには、まず建て主自身が十分に情報を集め、自分にとって最良の方法、会社を選択し、計画中は今何をしていて、何が問題であるかを常に把握し、さらに前向きな気持ちで関係者とのまめなコミュニケーションを怠らないことです。

まず、家をどのような方法で建てるかということです。注文住宅を建てるにあたっては工務店、ハウスメーカー、建築家から、プロデュース会社、ソーラーシステムなどの特定工法、分離発注、さらに建て主が建てられるところは自分で建てるセルフビルドと呼ばれる方法まで実に様々な選択肢がありますが、重要なことは、どなたにもぴったり合う最善の方法はないということです。

自分にとってのベストを選択するためには、まずそれぞれのメリットとデメリットを十分に理解し、家族のライフスタイルを再確認した上で、自分や家族にとって何が大切なことなのかをはっきりと見極めることが大切です。実はご自身や家族のライフスタイルをはっきり自覚しながら生活されている方は思った以上に少なく、家づくりが生活に対する価値観を再確認するいい機会にもなるようです。

家を建てようとすると知人や親戚からいろいろな建て方を勧められることと思いますが、そのご家族にとってのベストとあなたにとってのベストはおのずと違います。メリット・デメリットも分からずについ話に乗ってしまうと、それだけで大きなトラブルの種を抱えてしまうことになりかねません。従わなければならない相手は別にして、自分自身が十分に納得して選ぶことが大切です。

方法が決まれば次に会社を決めます。ここで大切なことはあなたとその会社(社長や担当者)との相性です。建物の方にばかり目が行ってしまい、つい相性を軽視する方が多いようですが、家づくりのパートナーは物を買うときの店員さんのように一瞬の付き合いではありません。1年前後にわたるプロジェクトの協働者であり、その後のメンテナンスを考えれば一生付き合う相手になります。

できれば共感を感じる相手や友人としても付き合えるような相手が理想であり、その確認のために食事を共にしたりすることも大切です。

そして、いい方法といい会社が見つかったら、契約前に予想される懸念事項を全て確認しておくことが大切です。誰と直接打合せをするのか、連絡方法はどうするのか、打合せの頻度はどのくらいか、どの段階まで設計変更が可能か、その場合の追加料金はどうなるのか、工期が延びたらどうするのか・・・。この時点での疑問が全てなくなるまで、絶対に契約をしてはいけません。

もちろん、契約書はしっかりと読み込み、口頭で確認したことで契約書に記載されていないことは、議事録に書き留めておいてください。

契約したらいよいよ計画に入りますが、計画中に大切なことは、決して任せっぱなしにしないことです。常に工程を確認して、疑問があればその場その場で確認します。小さなことでも問題点をそのままにしておくと時間と共に解決が難しくなり、最後には「建て主も了解していた」ということで済まされてしまう場合があります。

だからといって、関係者を猜疑心で見ることは禁物です。あくまでも信頼関係を維持した上で「いい家をつくるためにみんなでがんばろう」という雰囲気をつくっていくことが大切です。ものづくりに携わる人たちは、同じ要求をしても、こちらの態度や言い方によって「あの厳しい建て主をうならせる家をつくってやろう」とも、「適当に片付けて小うるさい建て主と早くさよならしよう」とも思うものです。

そして特に職人のやる気は多かれ少なかれ建物の完成度に影響し、それがまたトラブルの種になっていきます。そうならないために、いつも関係者への感謝を忘れずに、何か起こった場合も、まず責任を問うようなことは言わずに、関係者が前向きに解決に臨めるような雰囲気をつくってください。

以上ができれば、ほとんどのトラブルは未然に防げるか、小さいうちに簡単に解決できます。そしてそれ以上に家づくりそのものがいい思い出となり、そこに住み続ける限り、一緒に苦労を共にした人たちの温もりを感じることができます。

逆に、例え責任を問えて金銭的な実害はなかったとしても、いったん深刻なトラブルが起きれば家の完成度に影響ができるばかりでなく、大変不愉快な思いをしなければなりません。

そしてそこに住み続ける限り、ことあるごとに苦い思い出を思い出さなければならないというようなことは是非とも避けたいところです。

・自分で情報を収集し、自分と家族にピッタリ合った方法と相性の合う会社を選ぶ。
・契約前に疑問を全て解消しておく。
・計画中は任せっぱなしにせず、常に状況を把握する。
・関係者に感謝の気持ちを持って、トラブルが起こったら前向きに対応する。
(関)
まじめな家づくりセミナー