委任契約(民法)

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委任契約とは、「委任者が法律行為をすることを受任者に委託し、受任者がこれを承諾することによって効果が生ずる」契約(民法第643条)のことです。

建築士、弁護士、司法書士、行政書士、医師などの専門家に仕事を依頼する場合が典型的な委任契約で、注文住宅を建てる際に設計事務所と締結する設計監理契約は一般的に委任契約に分類されます。
※詳しくは、本記事の「◆設計監理契約は委任契約か請負契約か」をご覧ください。

◆委任契約の特徴

請負契約は仕事の結果に対して報酬が支払われる契約ですが、委任契約は結果を出すこと(例えば、弁護士の場合、訴訟で勝つこと)を必要としません。

しかし、結果を出さなくても報酬を得られるのであれば、受任者が無責任な行動をしてしまいますので、民法第644条では「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」としており、いわゆる善管注意義務を課しています。

「善管注意義務」とは、受任者の職業や地位などから考えて、通常期待される注意を払う義務のことで、高度な知識や技術をもつであろう専門家にはより高度な善管注意義務が課されます。

また、民法第645条により、受任者は委任者から請求があった場合、いつでも仕事の状況を報告しなければならない義務があり、仕事が終了した後にも遅滞なく結果を報告する義務があります。

◆報酬

民法の原則では委任契約の報酬は無償ですが、特約による報酬の請求を認めています。実務的には無償であることは稀で、特約を設けて有償とするのが一般的です。

請求時期の原則は、委任した仕事の終了後です。例えば、土地や建物の登記に関する業務を行う司法書士への報酬支払いは登記完了後です(実務的には、登記に必要な費用と報酬を前払いし、登記完了後に精算することが多い)。

請求時期にも例外が設けられており、期間によって報酬を定めた場合は、その期間の経過後に請求することができます。注文住宅の設計を設計事務所に依頼した場合、設計監理業務は長期間の仕事になるため、その業務ごとに期間を定めて報酬を支払うケースが一般的です。

◆設計監理契約は委任契約か請負契約か

これまで設計監理契約は、委任契約(正式な法律用語では準委任契約と言います)とみなされてきましたが、2009年に設計監理契約は請負契約であるとの高裁判決がでました。

委任契約と請負契約の違いは、これまでに説明してきたように、仕事の結果に対して報酬が発生するのか、瑕疵担保責任はあるのか、という点です。

まず、報酬の発生についてですが、請負契約の報酬はその契約の特徴から仕事が完成することで確定しますが、委任契約の場合は、仕事が完成していなくても報酬を得ることができます。例えば、設計段階で計画がストップした場合、委任契約であれば設計事務所は建て主からそれまでの報酬を請求することができますが、請負契約であれば仕事(設計図)が完了していないので設計事務所は建て主に請求することができません。

次に、仕事の成果物である設計図にミスがあった場合、委任契約であれば設計の専門家としての注意義務を払っていれば責任は問われませんが、請負契約であればそのミスが故意でなかったとしても責任を負い、設計事務所にとって大変厳しい契約形態になります。

さて、この裁判では、当初の建築予算を大幅に超過(約1.7倍)した設計を行った設計事務所に対して建て主が損害賠償請求を求める、という訴えでしたが、建て主の要求通り、設計事務所側に損害賠償の支払いが命じられました。東京高裁は「設計契約は、設計図書の作成および引き渡しを目的とする請負契約と解される」との判断を示しました。

最高裁判決はでていないため、現在でも設計監理契約は委任契約とされていますが、契約形態の議論はさておき、予算を大幅に超える設計を行った設計事務所の仕事の進め方に対して責任を追求することは当たり前のように感じます。

設計事務所には設計の専門家として、しっかりとした仕事をしていただきたいものですが、依頼する側(建て主)も予算に見合わない実現不可能なプランに浮き立つことなく、冷静に実現性を評価して設計事務所を選ぶように心掛けてください。

(笠井)
まじめな家づくりセミナー