所有権と借地権

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土地の権利には、大きく分けて「所有権」と「借地権」とがあります。

◆所有権

一般的に土地の売買で多いのは「所有権」での売買です。

所有権とは、文字通り「土地を所有する権利」のことで、売買の対価を支払えば、それ以降は土地を買った人が所有することができます。

土地の所有者になれば、その土地を自由に処分(売却、贈与、相続など)できるのと同時に、その土地に対する固定資産税・都市計画税を支払う義務が生じます。

◆借地権

借地権は、他人から土地を借り、その上に建物を建てる場合の権利です。

借地権は所有権と比べて取得時の費用が安いため、イニシャルコストを抑えたいという人にとってはメリットがあると言えます。一方、住宅ローンの利用が難しい点、建てる建物の構造等に制限が生じる点がデメリットです。

それでは、さらに借地権について詳しく見ていきましょう。

<地上権と賃借権>

借地権には「地上権」と「賃借権」があり、それぞれ法的な扱いが異なります。

借地権とはいえ、「地上権」には土地を直接支配できる強い権利があります。土地所有者(地主)の承諾なく第三者に地上権を譲渡したり、賃貸することができます。また、土地所有者には地上権を登記をする義務が生じるため、登記簿に記載されるのが一般的です。

一方「賃借権」は、土地を間接的に利用できるのみで「地上権」ほど強い権利ではありません。譲渡や転貸、建物の建替えを行うにあたっては、土地所有者の承諾と権利金の3~5%程度の承諾料が必要になります。土地所有者には賃借権を登記する義務がないため、登記簿に記載されないのが一般的です。

ただし、これまでの長い歴史の中で借地人の保護が図られた結果、実質上は、「地上権」も「賃借権」もほとんど違いはなくなっています。

<借地借家法とは>

賃貸借契約の規定で、戦後、土地を持たず、経済的に不利な借家人や借地人を保護するために規定された法律です。

しかしながら、地主が一度土地を貸してしまうと、その土地を取り戻すことが困難な規定だったため、平成4年に改正されるに至りました。

借地の存続期間は、旧法では木造等で最低20年となっていましたが、新法では建物構造に関係なく原則30年となりました。

また、旧法では土地所有者が更新を拒絶できる場合の要件が曖昧でしたが、新法では明確に規定されるようになりました。なお、法律改正前の借地借家法に基づく借地権は「旧法借地権」と呼ばれています。

<借地権の価格>

借地権は所有権に比べて資産価値が低く、住宅地では所有権としての市場価格の6~7割程度で取引されるのが一般的です。

相続税の評価では、路線価で借地権割合が設定されていますが、必ずしも市場で取引する場合の借地権割合と一致するわけではありません。

また、借地権と底地の所有者が別々の場合は、必ずしも「借地権価格+底地価格=土地価格」とはなりませんが、借地権と底地の所有者が同一となった場合には所有権としての市場価格と同程度の価値があるとみなされることが多いため、別々の借地権所有者と底地所有者が互いに協力して、同時に売却活動を行うこともあります(底借同時売買)。

<借地権を購入する際の注意点>

借地権の購入時に掛かる費用は地域性によっても異なりますが、借地権の権利金(購入代金)、契約更新料、建替承諾料、条件変更承諾料、名義書換料が必要です。

また、これら他にも別途、土地を借りている間に継続して支払う「毎月の地代」が必要になります。

地代を含め、販売時に明示されている費用については、前所有者が締結した契約内容を前提としているため、その段階では確定した内容ではありません。

もちろん、売却時にはある程度の下折衝がされていることが多いため、著しく条件が変わることは少ないと思われますが、あくまでも新規に契約する際の内容が最終的な内容となりますのでご注意ください。

・契約更新料
契約更新時に掛かる費用。一般的に更新料の相場は価格の3%~6%が目安と言われていますが、首都圏ではこれより高めになる傾向があります。

・建替承諾料
条件変更を伴わず、新たに建物を新築したり、増改築を行う場合の承諾料。地域差もありますが、価格の2~5%前後が目安と言われています。

・条件変更承諾料
非堅固から堅固建物への変更等、建物利用等の条件変更時に掛かる費用。

・名義書換料
売却時に所有権の名義変更をする費用。一般的には売主側で負担することが多い。

なお、借地権はあくまでも「建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権」のことを言い、建物が建っていないと明らかな権利を主張し難いため、古屋が建っている状態で取引されることがほとんどです。

また、借地権物件は所有権物件よりも担保評価が低いため、借地権を購入する際には住宅ローンの利用が難しいケースが多いと言えます。

現金で借地権を購入したり、すでに所有している借地権上に新規に建築する際にも、必要借入額が借地権の担保評価に達しない場合には、金融機関が住宅ローンの貸出しを渋ったり、融資額が必要資金に達しないことがあるので注意が必要です。

<建替時の注意点>

建て替えや増改築の際には地主の承諾が必要であり、建替承諾料が発生します。

なお、堅固な建物が建つと借地期間以上に建物の耐久年数が見込まれ、借地権の返還を困難にする可能性が高まることから、借地権上に建築可能な建物は一般的に非堅固建物(地上階のみの木造家屋)に限られることが多いと言えます。
また、同様の意味合いで、一般的に集合住宅などは建築できないことがほとんどです。

<契約更新時の注意点>

旧法に基づく契約では、借地権の存続期間が満了した時(借地契約更新時)に借地契約を更に継続することができ、「当事者の合意による場合」、「借地権者から更新の請求をした場合」、「土地所有者に自己使用その他の正当事由がある場合を除き、土地所有者が異議を述べた場合でも借地権者が使用を継続できる」と定められています。

地主は契約の更新について異議を唱えない代わりに、借地権者に対して更新料を請求するのが一般的です。

<売却時の注意点>

売却の際には地主の承諾が必要であり、承諾料が発生します。地主が借地権の売却を承認しない場合は、裁判で承認を得られたケースもあります。

※(参考)定期借地権

定期借地権とは、平成4年に施行された借地借家法で、借地の契約期間を定めた「改正借地借家法」が制定され、確定期限で借地期間が終了する「定期借地権」が制定されました。

定期借地権は、通常の借地権と異なり、土地所有者が一定の期間を定めて土地を貸与することができる制度で、当初定められた契約期間で借地関係が終了し、その後は更新することができません。

土地所有者にとっては、定めた期間が満了すれば、期間が延長されることなく確実に土地が返還される点、借主にとっては、保証金が土地代の20~30%程度と負担が軽く、契約終了後に返却される点が双方にとって良い制度と言われています。

なお、定期借地権では、借地期間の契約完了時に土地を更地にして返還しなければならないため、解体費用は借主が別途負担する必要があります。

さらに定期借地権には、以下の3つのタイプがあります。

・一般定期借地権

個人住宅で一般的なケースで、借地期間を50年以上としたものです。期間の満了に伴い、借主が建物を取り壊して土地を返還しなければなりません。

・建物譲渡特約付借地権

契約から30年以上経過した時点で、土地の所有者が借主の建物の買い取りを約束しておくものです。買い取った時点で借地権はなくなります。

・事業用借地権

大型ロードサイド店等の事業用の建物を建てて利用することを目的としたもので、かつては借地期間が10年以上20年以下とされていました。この場合、借地人は最長でも20年後に土地を更地にして返還しなければならなかったため、平成20年1月1日以降、事業用借地権の期間は10年以上50年未満に改められました。

(矢野)
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